ニッポン維新(181)09年政権交代を総括するー9

Pocket

09年の総選挙で民主党が掲げたマニフェストには、冷戦後の日本の在り方を追求しようとする姿勢が見えました。またその前年に初の黒人大統領が誕生したアメリカを強く意識した様子もうかがえました。アメリカの変化に期待感を膨らませたのです。
冷戦後、唯一の超大国となったアメリカは世界の一極支配を考え、アメリカ型資本主義を世界に波及させるグローバリズムに力を入れますが、グローバリズムは世界に格差と貧困をもたらし、アメリカの思惑とは裏腹に世界の反米感情を高めました。9・11の同時多発テロがアメリカを襲い、その報復として出兵したアフガニスタンとイラクでアメリカは泥沼に陥ります。戦争による財政負担と金融危機がアメリカ経済を失速させ、軍事力と市場原理主義を信奉するブッシュ政権からイラク戦争反対を訴えるオバマ政権へとアメリカは変わりました。オバマ大統領は就任するやそれまでのアメリカ大統領と異なり「核廃絶」を訴えるなど冷戦後の新たな指導者像を世界に示しました。
民主党がアメリカとの対等な関係を訴え、小泉政権以来の対米従属姿勢を変えようとした背景には、そうしたアメリカの変化に対する期待があったと思います。民主党はいったん挫折していた東アジア共同体構想を復活させ、日中韓の連携を強める中で特に2010年に日韓併合百周年を迎える韓国との関係を重視しました。
アメリカとは自由貿易協定の締結を目指す一方、日本を市場原理主義に組み込もうとする「年次改革要望書」からの脱却を図り、国民の金融資産3百兆円を市場原理に委ねる「郵政民営化」を見直す事にしました。アメリカとの自由貿易協定で影響を受ける農家に対してはEUやアメリカで広く行われている農家戸別所得補償制度を導入し、公共事業を農業政策の柱にしてきた自民党との違いを見せつけます。
「コンクリートから人へ」を合言葉に、公共事業をバラまいて経済活性化を図る政策から、政府が直接国民の家計を支援する政策に変えようとしました。それが子ども手当や高校授業料の無償化制度です。子育てや教育の負担が大きい世代を支援する事で、少子化対策と経済の消費刺激策を同時に行い、デフレ経済からの脱却を図ろうとしたのです。
現在の日本が直面している最大の問題は、世界最速のスピードで進展する人口減少と少子高齢化問題です。百年前に4千万人だった人口は経済成長と共に3倍に増えましたが、08年をピークに減少に転じ、このままでは百年後に再び4千万人になると予測されています。しかもその半数は65歳以上の高齢者になるのです。自民党は家計への支援を「バラマキ」と批判しましたが、公共事業にバラまくよりも家計にバラまく政策を民主党は採用した訳です。
さらに民主党は明治以来の中央集権体制を打破するために「地域主権」と「政治主導」を掲げました。私は戦後の日本が驚異的な経済成長を達成した要因は、冷戦構造を利用して軍事をアメリカに委ねて経済に特化する政策を採った事と、自民党が官僚や経済界と手を組む中央集権体制にあったと思います。しかしその構造は冷戦の終了と共に機能しなくなりました。
長年続いた構造が癒着と腐敗を生み出した事もありますが、アメリカがそうした構造を許さなくなってきたからです。アメリカは日本型資本主義をアメリカ型に変えようとして官僚機構の弱体化を図りました。橋本政権以降の自民党は「政治主導」を実現するため、アメリカの大統領制に近い「官邸機能の強化」に力を入れました。これに対して民主党は「党と政府の一体化」による「政治主導」を目指しました。政党に権力を持たせる英国型にしようとしたのです。
そのうえで年来の課題である財政健全化について、「4年間は消費増税を行わない」、「消費増税を行う時には国民に信を問う」事を選挙公約にしました。消費増税を掲げた政権が選挙で勝ったためしはありません。自民党は選挙に勝った後で消費税を上げるやり方で国民の批判をかわしてきました。しかし民主党はまず国民への家計支援を定着させ、その政策を継続するためには消費税導入が必要だと訴えて選挙の争点にするつもりに見えました。それはこれまでの消費税の歴史からすると画期的な事です。しかし民主党内が本当にマニフェストについての考え方を共有していたのか次第に疑わしくなりました。(続く)