10/10/28 一将功成りて万骨枯る・・・のTPP◆日刊ゲンダイ

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米国戦略国際問題研究所(CSIS)と日本経済新聞の共同シンポジウムで、前原誠司外務大臣は大言壮語しました。「国内総生産(GDP)の1.5%しか占めていない1次産業の農業を守る為に、残り98.5%のかなりの部分が犠牲になっている」と。いよっ、”口先番長”の面目躍如です。
何故って、米国の農業がGDPに占める割合は僅(わず)か0.9%。その米国では「1次産業の農業を守る為に」、生産者への手厚い「直接支払い」制度を堅持。EUとて同じです。即ちGDPなる数値の多寡で産業を取捨選択するのでなく、如何なる国家戦略の下に如何なる農業を護り・育むか、が問題なのです。
彼我(ひが)の違いは、この点です。65歳以上の農業者の比率が今や7割近い日本の農業の衰退を防ぐ為には、質量充実を目指す有為な専業農家の規模拡大を育成すべきです。にも拘らず、偉才・小沢一郎氏が思い描いた農業者の自立支援とは裏腹な、第2種兼業農家への不労所得へと、農業者戸別所得補償制度は変容してしまいました。
一例を挙げれば、夫が県庁職員、妻が学校教諭の第2種兼業農家は、給与所得のみでも2人合算で、県民所得の4倍近い年収。米、野菜等の耕作物の殆どは自家消費。申し訳程度に出荷するだけ。週末に小一時間、ガートラ、ガーデントラクターを動かすだけの彼らは、豈図(あにはか)らんや、所得補償金の対象。販売価格よりも生産コストが高いからです。”片手間農家”の公務員世帯が”ヤミ手当”を得る本末転倒です。
既に9カ国が参加表明したTPP=環太平洋戦略的経済連携協定の「外圧」を”攘夷(じょうい)”し続けるのは至難の業。その冷徹なる認識に立って、であればこそ、2大農業輸出国の米国、豪州とFTA=自由貿易協定を同時に結ぶが如き”黒船”襲来を乗り切る為にも、日本農業の構造改革を如何に敢行し、安全保障としての食糧を確保するか。攘夷・開国の不毛な二項対立を超えた、「改国の在り方」を具体的に示してこそ、「有言実行内閣」の面目躍如です。
「私が議長を務めるAPEC首脳会議」と所信表明演説でも高らかに謳った場での諸外国への”お土産”としてのTPPが、「一将功成りて万骨枯る」状態へとミツグ君ニッポンを陥らせぬ様、願うや切です。