ニッポン維新(111)改革のためにー11

鳩山政権には官の側からの「政治とカネ」の攻撃だけではなく、沖縄の普天間基地移設問題を巡りアメリカからの攻撃もありました。

2008年の大統領選挙で「チェインジ(変化)」を掲げて当選したバラク・オバマ大統領は、初の黒人大統領ということもあり、それまでのアメリカの政策を大きく変えるとの期待が持たれました。しかし一方でアメリカは未曾有の金融危機のさなかにあり、経済を立て直すのは至難の業とも見られていました。

内政問題の難しさを外交でかわそうとするかのように、オバマ大統領は外交面でこれまでにない政策を打ち出しました。就任直後の09年4月にチェコのプラハで広島、長崎の原爆投下に言及しながら「核廃絶」に向けた演説を行い、6月にはエジプトのカイロでイスラム社会とアメリカの歴史的和解を訴えました。これまでのアメリカ大統領とは異なる姿に世界は目を見張りました。この年のノーベル平和賞はオバマ大統領に贈られました。

一方、対日外交でオバマ大統領は自民党の麻生政権に極めて冷ややかな態度を見せ、日本の政権交代を待ち望むかのような姿勢を示しました。そのせいか就任直後の鳩山総理は「日本が政権交代できたのはアメリカの政権交代のおかげ」と発言し、オバマ政権に親近感を示していました。

09年11月に来日したオバマ大統領に対し、鳩山総理は50億ドルという巨額のアフガン支援を約束し、翌年日本で開かれるAPECにオバマ大統領が来日する時には広島を訪れて欲しいとの期待感を滲ませました。また政権交代の選挙の際に沖縄県民に約束していた普天間基地の「県外、国外移設」にも理解を求めようとしました。

そもそも普天間基地移設は日本側が言い出したことでアメリカが望んだ訳ではありません。米兵による少女暴行事件で盛り上がった反基地闘争を抑えるために当時の橋本龍太郎総理が言い出しました。すると新基地建設のために投下される公共事業費のおこぼれに預かろうと多くの自民党議員が沖縄に事務所を構えました。普天間問題はそもそも安全でも防衛でもない利権の話であることをアメリカは良く知っています。

そのアメリカは冷戦後の米軍再編の一環としてグアムに沖縄の海兵隊を移すことを計画していました。そしてその費用を日本に負担するよう求めていました。当初は2兆円を要求され、その後1兆5千憶円程度になりましたが、それにしても莫大な費用です。

米軍が自国に引き上げる費用を日本国民の税金で払わなければならないというのは説明がつかない理屈で、自民党時代から日本政府は対応に苦慮してきました。アメリカにとって沖縄は返還当時から「金のなる木」と言われてきました。返還の見返りにアメリカは様々な理由で日本から金を引き出してきたのです。つまり普天間移設問題とはそうしたことが絡まり合った問題なのです。

鳩山政権がアフガン支援に巨額の費用を拠出する事を決めたのは「普天間問題も考慮してくれ」という意味が込められていたと言われます。しかし金融危機で財政が極端に厳しくなったアメリカにとって、普天間問題はさらに「金のなる木」にしなければならない問題でした。

「日米両政府が合意したことを政権交代があったからと言って変えることは出来ない」とアメリカは言い出しました。鳩山政権の方針を真っ向から拒否した訳です。しかしこれはおかしな理屈です。国民が新政府の政策を支持して政権交代させたならば、政策が変わるのは当たり前です。それをアメリカが知らない筈はありません。民主主義が民主主義でなくなるからです。

もっともアメリカは表では民主主義を掲げながら、国益のためには常にダブルスタンダードの外交を繰り広げる国ですから、日本国民の声を無視してでもアメリカの国益、すなわちアメリカ経済の再建を優先させる国です。そしてアメリカが経済を再建させようとするときに採る道はいつも一つです。それは戦争を起こす事で経済再建を図る道です。次第に不穏な話が聞こえてくるようになりました。(続く)