11/06/16 原発をめぐる「東西対決」どうなってんの◆日刊ゲンダイ

「国民の生命を守る観点から(浜岡原発の停止は)当然だ」と述べたのは神戸商工会議所会頭を務める大橋忠晴・川崎重工業会長です。
関西経済同友会代表幹事の大林剛郎・大林組会長も、「毎日新聞」大阪本社版のインタヴューに応じた6月7日、「3月11日以降の新規立地は難しい」と”脱原発”宣言しました。因(ちな)みに大林組は、関西電力美浜原発1号機の原子炉建屋を始め、原子力関連施設の施工を手掛けています。
「長期的には(太陽・風力・地熱等の)再生可能エネルギーをどれだけ使うかだ。中期的には原発の安全性を高めてリスクを限りなく下げ、その間に(再生可能エネルギーの)技術力や効率を高めていくしか日本では道がない」との彼の発言は、2022年迄に原発を全廃するドイツの戦略的心智に通じます。
が、そのインタヴューと同日に首相官邸で開催された「新成長戦略実現会議」では、「原発の安全性を明確に説明すべき」、「原発稼働の必要性を説得するのが国の責任」と「早期稼働を求める意見が相次いだ」と共同通信は配信しました。前者は日本商工会議所会頭の岡村正・東芝会長、後者は経済同友会代表幹事の長谷川閑史・武田薬品工業社長の発言です。
東京大学を卒業後に中曽根康弘氏の紹介で日本原子力発電に入社した与謝野馨経済財政担当大臣も「引き続き国策としての原発推進の重要性を指摘。原子力政策の推進に異論は出なかった」と議事録は語ります。
いやはや何たる「東西対立」。16年前の震災時に森毅氏や瀬戸内寂聴女史を起用し、「水、持ってって」の軽妙洒脱な公共広告CMを制作の大阪電通。「心をひとつに、がんばろう日本」と”大連立翼賛体制”を永田町に先駆け唱和する今回のACの硬直性。彼我の心智の違いを隠喩します。
「大阪発祥の住友グループで実質的な本社を残すのは当社ぐらい」と9日付「讀賣新聞」大阪本社版で述懐の松本正義・住友電気工業社長は、「超電導の技術を応用した送電線にすれば送電ロスを大幅に減らせる」、「銅線を使っている現在の送電線では、銅線の電気抵抗で約5%の電力が失われている。このロスは原発数基分の発電量に当たる」と看破しています。
思えば太陽光発電パネルの生産も技術開発も関西が嚆矢(こうし)でした。孤立無援なれど意気軒昂な宰相も御遍路の前に関西で叡智を”一夜漬け”したら、大向こうが唸(うな)る実体を伴った新たな奇策を打ち出せるやも知れません。