11/10/10 政治決断で増税回避を◆共同Weekly

約3600に上る上場企業の中で、国税の法人税、地方税の法人事業税とも1円も納めていない企業が、驚くなかれ、全体の7割を超えています。今年2月の衆院予算委員会で質問した私に、財務相だった野田佳彦さんも認めざるを得なかった。
かくも不可解な状況が生まれるのは企業の利益に課税する税制だからです。債務超過に陥っている会社を好業績な大手企業が戦略的に買収し、連結決算に組み入れ赤字決算へと“転落”すると、翌年黒字回復しても自動的に7年間、法人税も法人事業税も全額免除される仕組みなのです。街場の中小企業が赤字転落したら、金融機関の貸し渋り、貸し剥がしに遭うのは必至。増殖し続ける大企業と衰弱する中小企業。行き過ぎた市場主義経済の“天国と地獄”が放置されています。利益でなく支出に対して広く薄く課税する公正=フェアな「外形標準化」を導入せねば、源泉徴収される給与所得者の不満も高まるばかりです。
「わずか1%の富裕層が米国の富の40%を独占している腐敗と私利私欲を99%の国民は容認できない」と映画監督のマイケル・ムーア氏やノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツ教授も参加し、燎原(りょうげん)の火のごとく、全米で広がる新自由主義経済に対する「ウォール街デモ」は、遠い海の向こうの話ではないのです。
新政権発足直後の予算委でも、新党日本がかねて主張してきたタンス預金を市中で活性化させる「無利子非課税国債」の発行、年間1000億円も金融機関の不労所得と化している「休眠預貯金口座」の公的活用、中央銀行の日本銀行に政府が支払う利子は国庫納付金として還流され、利子負担は差し引きゼロとなる「日銀直接引き受け国債」の発行も求めました。実は既に本年度の予算総則第5条には30兆円分の日銀引き受けを認める旨、明記されています。
償還期限を迎える赤字国債の借換分として財務省が充当を予定するのは12兆円。残り18兆円の起債は新たな国会議決を経ずとも、政治決断で即日実施可能です。
米国債を主体に80兆円にも達する政府保有の外国債を1割売却、もしくは担保に起債するだけでも8兆円の「財源」が生まれます。仮にその程度で乱高下する脆弱(ぜいじゃく)性だったら、基軸通貨としていかがか、と国際会議で議論すべきです。世界最大の米国債保有国・中国は外交カードとして用いています。
平安前期の貞観地震以来の大災害に直面した日本は今こそ、知恵を使って「財源」を生み出すべきです。真の財政再建とは、消費減退、景気低迷、税収減少の“負の連鎖”で財政も悪化させる増税ではなく、急がば回れの大胆な経済政策で景気浮揚、消費拡大、税収増加をもたらし、結果として財政規律も好転させる「新しい方程式」の導入です。
なのに「復興貢献特別所得税」といった羊頭狗肉(くにく)の増税ありきの「古い方程式」が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しています。「増税で景気浮揚した国家は古今東西、いずこにも存在せず」。国民新党と与党統一会派を組む新党日本は、パートナーが歩むべき道を見失っている時こそ、真の友人として諫言(かんげん)を続ける覚悟です。民主、自民両党にも、同じ認識の方々が数多く存在するのですから。