10/08/12 “赤い貴族”そのもののこの発想

年間1500万人が利用する大阪国際空港=伊丹空港を廃止せよ、と大言壮語する向きは、早い話が東京都23区や川崎市、横浜市在住者に、羽田でなく成田から国内線に搭乗せよ、と強制するのと一緒です。
人間としての体温を持ち合わせぬ“赤い貴族(ノーメンクラツーラ)”が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する社会主義国の施策ならばいざ知らず、曲がりなりにも民主主義国を標榜する日本で、斯(か)くも上から目線な暴論が、市民権を得られる筈も有りません。
ベニート・ムッソリーニを輩出したイタリアのミラノでも嘗(かつ)て、都心から僅(わず)か5kmと好立地のリナーテ国際空港を廃止し、新設のミラノ・マルペンサ国際空港へと集約する計画が発表されました。が、都心から40km離れたマルペンサよりも利便性が高いリナーテは、今日に至るも健在で、ローマ、ナポリ等の国内線に留まらず、フランクフルト、ロンドン、パリ、アムステルダムを始めとするビジネス路線を、イタリア内外の航空会社が運航しています。
為政者側の「都合」に、“衆愚”は黙って従う筈、と思い込んでいるとしたら、破綻した計画経済を未だ信奉する“赤い貴族”そのものです。残念ながら関西国際空港は、その立地自体が、消費側の希望=コンシューマー・インならぬ供給側の都合=プロダクト・アウトな産物だったのです。
その失政を糊塗するが如く、梅田から関空にリニア新幹線を敷設しよう、と豪語する向きも居ます。呵々(かか)。これこそは、空理空論。民間企業たる西日本旅客鉄道、東海旅客鉄道の何れも、参画する筈も有りません。何故って、福岡や東京への空路はJR各社にとって競合路線なのですから。
更には、定見・節操無き内股膏薬(うちまたごうやく)の如くに近時は、伊丹空港「跡地」を、非常時に首都機能を補完する「危機管理都市」とすべき、と巧言し始めました。呵々。豊中市、池田市、伊丹市を始めとする空港周辺の大阪府・兵庫県の自治体は、山猿の生息地として名高き箕面市の首長と議会を除いて、利便性高き大阪国際空港の存続を、空港維持費の費用負担も行った上で、求めているのです。
脱ムダの行革を広言するなら、大阪・京都・奈良の府県境に、建設費581億円を投じて竣工したものの、今や平成の遺跡と化した関西文化学術研究都市に位置する「私のしごと館」を「危機管理都市」に転用すべきではありますまいか?

2010/08/12