10/08/19 「救助ヘリ出動要請」に疑義あり

「警察・消防、すべて税金 民間は1分1万円」と小見出しを打って17日付夕刊で「毎日新聞」が、山岳遭難の救助ヘリ出動費用に関して特集を組みました。
2009年の全国の山岳遭難は1676件、遭難者は2085人(うち死者・行方不明者317人)。統計を取り始めた1961年以降で最多。40歳以上が77%を占める現状を報じた上で、以下の「矛盾」を指摘しています。
「警察ヘリは警察法、防災ヘリは消防組織法に基づき、人命救助に当たる。共に費用は遭難者に請求せず、運航経費や人件費等を税金で賄う。公共ヘリが出払っている場合などは民間ヘリが活用されるが有料だ。日本山岳協会に拠(よ)ると、民間ヘリの平均費用は『稼働1分当たり1万円。遭難者本人や家族に請求される。2時間掛かれば120万円になる』」と。
県有ヘリ2機が「無料」で出動中に3番目の遭難者が救出を求め、民間ヘリが「有料」で出動する理不尽な事態に幾度も遭遇しました。購入費、人件費を除いても、警察ヘリ、防災ヘリの何(いず)れも1機当たり1億円以上の年間維持費を、税金から投じています。
04年に当時県知事だった僕は、救助ヘリの有料化を危機管理室に指示しました。が、“出来ない条項”を並べ立てるのが得意な公務員組織は、前述の警察法、消防組織法を「根拠」に有料化は人命救助に馴染まない、と難色を示しました。
が、「山岳ガイドや山小屋経営者が加盟する各地の『山岳遭難防止教会』が動員されると」、「遭難者らに請求する『日当』は夏山で捜索者1人当たり平均3万円、冬山で同10万円」なのです。
福祉や教育の領域では、例えば年収600万円以上の世帯には「所得制限」と称して無料化を除外し、費用の一部負担を求めるケースが一般的です。病気や事故で出動する救急車とは異なり、自己意思に基づく登山に於(お)ける救助ヘリの出動要請には、何らかの自己負担を求めるべきなのです。
それは酷だと強弁するなら、入会権を根拠に森林組合が入山料を徴収するのと同様、登山者には山岳共済保険の加入を義務付ける法改正を可及的速やかに実施すべきでしょう。最小不幸社会も最大幸福社会も、その何れも絵に描いた餅で留(とど)まる日本の政治に課せられた、些末ながらも肝要な「決断」です。

2010/08/19