12/05/10 正しいハイエクとケインズを◆日刊ゲンダイ

「私の真の敵対者。それは名前も顔も持たず、党派も持っていない。選挙に名乗りを上げる事はなく、選挙で選ばれる事もない。にも拘らず我々を支配する。敵対者、それは金融界だ」。
1週間後にフランス第五共和制第7代大統領に就任するフランソワ・オランドの選挙期間中の発言です。新自由主義経済政策を喧伝する一方、リビアの故ムアンマル・アル・カダフィから選挙資金の提供を受けていたニコラ・サルコジの、二枚舌な所業に愛想を尽かしていた国民が快哉を叫んだのも宜(むべ)なる哉。
他方、冒頭の直截(ちょくせつ)な発言とは裏腹に、フランス国立行政学院=ENA卒業の、“選ばれし”フランス社会党の優柔不断な政治家は、気宇壮大ならぬ抽象空理な言説に終始し、景気浮揚と財政再建の二兎は疎(おろ)か、景気浮揚の一兎すら成し遂げるのは難しかろう、と衆目の一致する所です。当選翌日の世界的な株価と為替の反応が物語ります。
然(さ)りとて、ドイツのアンゲラ・メルケルとニコラ・サルコジの“メルコジ”財政緊縮路線が功を奏していたかと問われ、透(す)かさず胸を張れる「市場利害関係者」は居りますまい。15年以上に亘(わた)って、金利が一定水準以下に低下し、従来型の金融政策が効力を失い、「流動性の罠」状態が続く日本にとっても、対岸の火事ではありません。
経済学者のポール・クルーグマンが看破するが如く、「日本の不況の原因も、マクロ経済学が行うべきと説いている事を実行していないから」です。「切磋琢磨の正しいフリードリッヒ・フォン・ハイエク 富国裕民の新しいジョン・メイナード・ケインズ」の“融合(アウフヘーベン)”こそ、政治が決断すべき“長期不況下の方程式”と僕が述べる所以。
2年8ヶ月前の政権交代直後、削減ありきと麻生太郎政権下の補正予算3兆円分を削減した鳩山由紀夫氏に諫言した3項目を思い出しました。
維持修繕費は全額地元負担故に保守点検が滞る橋梁・隧道の緊急点検並びに強度補強に1兆円。介護従事者の時給30円アップに1兆円。全国17%の水洗化未達成地域への合併処理浄化槽設置に1兆円。 これぞ、公平ならぬ公正なハイエク、バラマキならぬ経世済民のケインズを、目に見える変化として実感させる「国民の生活が第一。」の景気浮揚。が、聞き入れられませんでした。BRICS=ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ5カ国で全世界の4割以上の人口、GDPの2割を占める中、欧米も日本も、日は再び昇るのでしょうか?