12/09/20 尖閣で、覆水盆に返らずの高い授業料◆日刊ゲンダイ

「相対する主権に関する紛争は、何(いず)れの国の肩も持たない」。
CIA長官を経て1年前に就任のレオン・パネッタ国防長官は17日、森本敏防衛大臣との共同会見で言明。「尖閣諸島の帰属に関して米国は中立だ」と強調しました。
にも拘(かかわ)らず、洞察力が欠落した日本の報道ムラは、「平和裏の解決を望んでいる」との彼の付言を以て、対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の下、米国は日本側を護ってくれる、と信じ切っているのです。成る程、「条約の義務を遂行する米国の立場は変わっていない」とも彼は述べました。が、畏兄・孫崎享氏がBS11「田中康夫のにっぽんサイコー!」で従前から看破する様に、日本の外務大臣と防衛大臣、米国の国務長官と国防長官の4人が出席した2005年の日米安全保障協議委員会=2プラス2で、島嶼(とうしょ)防衛は日本側の責任と合意しています。
米国の憲法では交戦権は議会が有します。而(しこう)して日米安保は、「日本国施政下への他国の武力攻撃に対し、米国は自国の憲法に従い行動」と規定。意訳すれば、武力攻撃に際し、日本は自力で島嶼防衛なさい。議会の承認が得られれば米国も応戦します。但し、その間の交戦で日本の施政下から他国の支配下に移れば、日米安保の対象外であるが故に米国は参戦しません。甘チャンな日本側が抱く“共同幻想”とは全く異なります。
「尖閣諸島地権者に『負債40億円』が発覚!」と題し「週刊文春」8月9日号が、遡(さかのぼ)って「『地主』栗原家には小泉政権以降、億単位の賃料支払い―尖閣諸島、領有と登記の経緯」と題し「週刊金曜日」4月27日号が報じた曰(いわ)く付きの「地権者」に、算出根拠が甚だ疑問な20億5千万円の購入金額を、功を焦った野田政権は内閣の一存で決定し、逆に虎の尾を踏んでしまいました。
9月11日付「しんぶん赤旗」の文章を引用すれば、「歴史的にも国際法的にも尖閣諸島が日本の領土である事は明らか」。であればこそ、国際司法裁判所=ICJへの提訴という形で先ずは国際世論を味方に付ける用意周到さが必要でした。
振り返れば、1995年には対日輸出額の6分の1に過ぎなかった米国の対中輸出額は2007年に逆転し、その差は拡大の一途です。
「緊張感を持って対応に万全を期していく。官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置して情勢を注視」と頭でっかちな学級委員の如き緊張感無き発言を首相が繰り返すも、同盟国の米国が「中立」から踏み出そうとしないのも宜なる哉。
実は日本も、1995年に対米輸出額の6分の1に過ぎなかった対中輸出額が2008年に逆転し、その差は拡大しています。覆水盆に返らずの高い授業料です。
因(ちな)みに昨日18日付「星条旗新聞=Stars and Stripes」は、「我々の目標は、米国と中国が世界で最も重要な2国間関係を確立する事であり、その上でも緊密な軍事関係が鍵となる」と訪中のパネッタ長官が中国の梁光烈(りょう・こうれつ)国防部長に述べた、と報じています。
更に、米国主導で隔年開催の「環太平洋合同演習リムパック2014」へ中国海軍を招待します。ジャパン・パッシング、ジャパン・ナッシングに傾斜する現実を冷静・冷徹に捉えねばなりません。石原慎太郎、野田佳彦の両名に象徴される哲学も戦略も希薄な「臆病=カワードな強がり」は、日本の国益を損ねるのです。
猶、畏姉・遠藤誉女史が本日19日付「日経ビジネスON LINE」に寄稿の「発火点は野田総理と胡錦濤国家主席の『立ち話』 中国政府の決意―最大規模の反日デモの背景」も一読に値します。
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