11/01/13 日本の経営者は“性善説”のお人よし◆日刊ゲンダイ

「辛卯(しんぼう)」が干支の今年は、断固として事を成さねば辛い目に遭う、と物の本は語ります。
奇しくもソ連邦が崩壊の20年前も、高層ビルが倒壊した同時多発テロの10年前も、鋭利な刃物を意味する“辛”が干(かん)でした。而(しこう)して、開かずの扉を押し開ける姿を現す“卯”とは、閉塞を打ち破る激しい動きが生起する乱世です。 「不条理」は世間に充満しています。
経済同友会は11日、「2020年の日本再生」なる提言を発表しました。社会保障制度の財源確保と財政再建に向け、消費税率を段階的に引き上げ、2017年度には17%とし、併せて税財政・社会保障制度の改革と並行して成長戦略に取り組み、19年度に基礎的財政収支の黒字化を達成する、のだそうです。
ニャンたる主体性無き、付け焼き刃な不勉強レポート! イギリスの付加価値税は17.5%、と「根拠」を述べるでありましょう。呵々(かか)。
以前にも詳述したイギリスでは、医療、教育、福祉、金融・保険、土地・建物の譲渡・貸借は何れも非課税。食料品、医薬品、上下水道、公共交通、書籍・雑誌・新聞・CD、乳幼児衣料はゼロ税率。電気、ガス、チャイルドシート、生理用品は5%の軽減税率。
その上で、他の科目に関して17.5%の付加価値税なのです。均(なら)したなら、10%前後に“過ぎません”。欧米被(かぶ)れな増税至上主義の経済人は、持続可能社会は消費税10%で実現可能。それ以上の課税は、非効率的な行政の怠慢に他ならぬ、と主張されてこそ、前近代的経営者との誹(そし)りを免れ得るのです。
同日付で帝国データバンクが発表した全国1万余社を対象の調査に拠れば、環太平洋経済連携協定(TPP)に参加すべしと65%が、非加入の場合は景気に悪影響と72%が回答しています。
“羊の皮を被った狼”と僕が看破したTPPは、金融も保険も公共入札も電波も放送も、更には言語も非関税障壁化の対象となる「公理」すら把握していない“性善説”のお人好しが、日本の経営者なのです。
既に貿易立国として「開国」済みの日本は、であればこそ、二国間できめ細かい自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)を、先駆者の韓国に倣って可及的速やかに締結してこそ浮かぶ瀬も有り、だというのに、いやはや。。