ニッポン維新(109)改革のためにー9

西松建設事件で有罪にする見通しもないまま小沢一郎氏の大久保秘書を起訴した検察にとって、政権交代が実現し小沢氏が与党幹事長に就任した事は脅威でした。何としても小沢氏を権力の座から追い落とさなければなりません。東京地検は過去に遡って摘発する材料を探し始めました。政権交代後にゼネコン関係者への事情聴取が一斉に行われます。

その結果、検察は三重県に本社を持つ水谷建設から石川知宏衆議院議員が小沢氏の秘書時代に闇献金を受けた容疑をつかみました。2010年1月、東京地検は石川議員本人と共に大久保秘書を再び逮捕します。容疑は小沢氏の政治団体「陸山会」の政治資金収支報告書への虚偽記載です。これによって西松建設事件を巡る大久保秘書の裁判は訴因変更され、西松建設事件は事実上うやむやになっていきました。

通常国会直前の現職議員逮捕は極めて異例です。石川議員は任意の捜査段階で闇献金の事実は否認したものの、虚偽記載は大筋で認めていました。従って証拠隠滅のおそれはありません。逮捕は逃亡、証拠隠滅、自殺のおそれがなければ出来ませんから、石川議員が不当逮捕だと主張すれば検察は批判される可能性がありました。しかし石川議員はそうしたことをせず、むしろ逮捕前に自殺をほのめかす発言をしていました。

検察の取り調べを受けた石川議員は知人に「高いところから飛び降りたくなる」と語ったと報道されました。これではまるで石川議員が自分から逮捕してくれと言っているようなものです。大久保秘書を起訴させたのが小沢氏なら、石川議員を逮捕させたのは本人ということになります。私はこの時検察との長期戦を覚悟した小沢氏の布石の一つではないかと思いました。

そして闇献金の送り主として水谷建設が出てきた事も注目でした。水谷建設の水谷功元会長は政治家に金をばらまく政商として有名で、これまでも北川正恭元三重県知事や石原慎太郎東京都知事に接近し、さらに原発の安全性を訴えて東京電力や霞ヶ関と対立していた佐藤栄佐久前福島県知事が逮捕された事件では東京地検に協力したいわく付きの人物です。

この事件当時、本人は裏金造りのための脱税容疑で収監されていました。従って事情聴取で検察と取引する可能性は十分にあります。佐藤栄佐久氏は取り調べ検事から「あなたは日本にとってよろしくない。だから抹殺する」と言われたそうですが、国策に逆らう知事は国家権力によって抹殺される事が分かります。

因みに佐藤栄佐久氏は二審で収賄金額をゼロと認定されました。水谷元会長の供述は信用されず、収賄は立証されなかったのです。にもかかわらず裁判所は二審でも佐藤氏を有罪にしました。「死んでも死にきれない」と佐藤氏は最高裁に上告中ですが、これが日本の司法です。司法は行政権力に隷属するのです。

陸山会事件にも水谷建設が登場したことは、陸山会事件が政治的な色彩の強い事件である事を伺わせます。原発に逆らう知事が抹殺されたように政権交代を仕組む者も抹殺されるのです。その抹殺の道具となるのが行政権力に隷属する司法とメディアです。

東京電力と戦い霞ヶ関と戦った福島県知事が抹殺された後、大震災で福島原子力発電所は深刻な事故に見舞われました。放射能汚染に国民生活は脅かされ、東京電力と行政の対応に世界は批判の目を向けています。事故は人災だと言われています。これは原発の安全を訴えて国に逆らった知事を抹殺した日本に対する天罰ではないでしょうか。

西松建設事件さえなかったら国難に立ち向かう日本のリーダーは小沢一郎氏でした。大震災を復興するには強いリーダーシップが必要です。そして復興過程は日本を改革し再生させるチャンスです。その時に行政に媚びへつらう政治家ばかりでは改革に結びつけることは出来ません。「政治とカネ」をでっち上げて変革の目を摘んできた日本はこうして沈没していくのです。(続く)