11/03/31 今こそ科学を用いて、技術を越える◆日刊ゲンダイ

家族と住居に加え、職場も被災者は失いました。今までの職場と新たな雇用が大阪や新潟に“確保”されていた阪神・淡路大震災、中越地震との大きな違いです。震災直後に求められる“衣食住”は程なく「意職住」、即ち職業と住居を得てこそ、人間は意欲を抱き続けられるのですから。
であればこそ、新党日本が与党統一会派を組む国民新党の亀井静香代表は、発生2日後に官邸で首相に提言した4項目の最後に、「国、自治体、更に経団連傘下企業も1社10名の緊急雇用を」と記しました。が、未だ“梨の礫(つぶて)”です。
その3日後に亀井氏と一緒に面談した連合の古賀伸明会長にも、僭越(せんえつ)ながら申し述べました。経済同友会や連合も各社、単組で応じ、首相と財界、労組の指導者が合同会見に臨むべきと。
70年代には世界屈指の開発技術力と市場占有率を誇るも何故か“国策”として採用されず、今や中国やドイツの後塵を拝する太陽電池の事業所を被災地で展開すると発表したなら、国民に勇気と希望を与えます。
津波が襲来した海岸線に高さ30mの堤防を建造して人々を戻すのが“新しい公共”ではない筈です。それでは、“科学を信じて・技術を疑わず”な20世紀型信仰から脱却出来ません。
“自然との共生”なる浅薄な広告代理店的お題目を超えた、地域分散型であって世代分断型ではない、成長ではなく成熟を目指す職住近接の新しい居住空間を、阿武隈高原や那須高原、北上山地に計画してこそ、“オンリーワン・ファーストワン”のモノ作り産業を自負し続けた日本が全世界から一目を置かれる、“科学を用いて・技術を超える”21世紀型思想たり得るのです。
ルシオ・コスタ、オスカー・ニーマイヤーの2人の偉才建築家を起用し、標高1100mの高原に出現したブラジリアは、僅か27年後の87年には世界遺産に登録されています。今こそ日本も安藤忠雄、磯崎新の両氏を起用し、最後の御奉公として奮闘頂くべき。
これぞ、空理空論とは異なり、実体を伴った気宇壮大なる「日本再興」への道程ではありますまいか。但し問題は、直感力・洞察力、決断力・行動力を兼ね備え、潔き出処進退の覚悟も有し、手続に拘泥する民主主義でなく、成果を編み出す民主主義を実現するだけの哲学を抱く指導者の存在なのですが・・・。