ニッポン維新(112)改革のためにー12

日本は「ものづくり」を自負する国ですが、アメリカは「最強の兵器づくり」を自負する国です。かつて宮沢総理が国会で「アメリカ人は怠け者」と言ったとして問題になった時、アメリカの議員達は口々に「世界最強の兵器を作る国がなぜ怠け者なんだ」、「もう一度痛い目に遭わさないと日本人はわからないらしい」と議会で発言しました。

また戦前の大恐慌からアメリカ経済が甦ったのはルーズベルト大統領の「ニューディール政策」ではなく、日本の真珠湾攻撃から始まる太平洋戦争であったことをアメリカ人は良く知っています。戦争が経済危機からアメリカを救うのです。

従って世界に紛争の種がまかれ、戦争が始まるとアメリカ経済は甦るとアメリカ人は確信しています。皮肉なことですがオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した頃から、世界は戦争の方向に動きだしました。世界で紛争が起こるとすれば、最も考えられる地域が朝鮮半島、台湾海峡、そして中東です。実際その三カ所で不穏な動きが始まり、それが鳩山政権を追いつめていきました。

09年の年末から韓国の李明博政権が朝鮮戦争の可能性に言及し始めます。そのため沖縄の海兵隊をグアムに移設させることは危険だという主張が韓国側から言われ出しました。年が明けると米軍の高官が「沖縄の海兵隊の任務は北朝鮮が崩壊した時に核兵器を撤去する事である」と発言し、朝鮮有事が近い事を匂わせます。それなら海兵隊を韓国に配備すれば良いだろうと私などは思いましたが、北朝鮮有事と「海兵隊は抑止力」という話がリンクされていきました。

また1月に米国防総省は台湾に64億ドルの武器売却を発表しました。これは当然ながら中国の猛反発を生み、にわかに米中関係が冷却化していきます。台湾海峡に波風が立ち始め、これも沖縄に海兵隊が存在する事の必要性を再認識させます。しかし元々沖縄の海兵隊はグアムに移設することになっていました。また私の知る限り最前線での攻撃任務を担う海兵隊を「抑止力」と言うアメリカ人はおりません。

これらの動きは経済危機にあるアメリカが、台湾に兵器を売って収益を上げる一方、極東の安全保障体制を緊張させ、韓国、日本に対しアメリカへの協力を強制する効果を生みます。そこにアメリカの戦略的意図があり、特にグアム移設を主張する鳩山政権に対して海兵隊移設の日本側の負担をつり上げる狙いがあると私は思いました。

中東でも情勢が緊迫します。6月にイスラエル軍がガザの支援船を急襲し、10人以上が死亡する事件が起きました。イスラエルの行動に反発する声が高まり、一触即発の危機が生まれます。そして9月にはアメリカがサウジアラビアに600億ドルの武器輸出を契約しました。これもイランや中東の反米勢力を刺激します。しかしそれは経済危機のアメリカにとって一石二鳥の効果を生むのです。

一方、沖縄では1月24日に行われた名護市長選挙で、普天間基地移設の受け入れに反対し、民主党などの推薦を受けた稲嶺進氏が自公推薦候補を破って当選しました。住民の民意を無視して基地を建設することなど出来ません。普天間移設を巡る日米合意の実現は極めて困難な情勢になりました。

そこに衝撃的な事件が起こります。3月26日、韓国の哨戒艦「天安」が魚雷攻撃で沈没し46人が死亡したのです。韓国政府は北朝鮮潜水艦の魚雷攻撃によると発表しました。まさに朝鮮戦争が現実になるかのような情勢です。しかし北朝鮮はこの沈没をアメリカの陰謀だと主張し、中国やロシアも北朝鮮の制裁に慎重な立場を取りました。そして韓国国内にも政府の発表を疑問視する声が上がりました。

結局、国連は北朝鮮を制裁する決議を行わず、議長声明で非難を匂わせただけでした。公安調査庁OBの菅沼光弘氏は「アメリカが知っていてやらせた」との見方をしています。つまりアメリカはこの地域で戦争状態を作りたかった。それを知っている中国もロシアもアメリカの挑発には乗らないようにしたというのです。

アメリカは国益のためなら謀略を仕組む国家です。ベトナム戦争もイラク戦争も軍やCIAの謀略情報に議会やマスコミが乗せられ、戦争に踏み切りました。オバマ大統領は平和路線を採る大統領のように見えましたが、経済再建のためには戦争経済に踏み切らざるを得なかったのでしょうか。私にはアメリカ内部とオバマ政権内部の権力闘争が影を落としているように見えました。共和党対民主党、ヒラリー国務長官対オバマ大統領の路線対立です。(続く)