10/07/26 「増税で経済成長」の愚論◆共同Weekly

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「日本救済には増税不可避」と唱和するメディアや評論家は、イギリスのジョージ・オズボーン財務大臣が消費税率を17.5%から20%へ引き上げると演説したのを引き合いに、だから、日本も“増税バス”に乗り遅れるな、と唱和します。
失笑を禁じ得ません。何故って、日本は先進国で唯一、賃金も物価も下落のデフレ基調なのです。昨年度の現金給与総額は前年度比3.3%減と最大の減少率を記録。デフレスパイラルの状況下で「増税ありき」と強行したなら、不況は加速度的に進行します。
経済が疲弊した地方都市のみならず、東京の都心部でも客待ちタクシーが溢れている現実に対し、解雇も倒産も無縁な霞ヶ関や、高給を食むマスメディアの住人は、批判を恐れず申し上げれば、“開いていない目”をお持ちなのでしょう。
イギリスを始めとする欧州諸国で増税論議が行われているのは、「リーマンショック」直後に適切且つ迅速な経済対策を実施した結果、日本とは異なりインフレ局面だからです。物価が上昇し、国民の生活が苦しくなるのを防ぐ上でも、社会保障の充実に向けた税制を、という議論。翻って日本は、増税の前に景気回復が先決です。
鳩山・小沢体制から菅・仙谷体制へ代替わりしたのを契機に、新党日本は国民新党と衆議院で与党統一会派を結成。会派を代表して6月14日の本会議で代表質問に立ち、「行政組織や国家公務員制度の見直し」を声高に語る民主党は何故、「地方公務員制度の見直し」をマニフェストの何処にも明記しないのか、と質問しました。
諸手当を除いて控え目に見積もっても、民間事業所の平均賃金の1.5倍余りも恵まれているのが地方公務員です。地方公務員286万人、国家公務員64万人、計350万人の公務員給与を10%削減するだけでも2.5兆円、消費税1%分の財源が生み出せます。
が、菅直人首相は、「地方公務員の給与をどうこう言うのは、地方分権の考え方として問題」と答弁しました。地方公務員の給与も、国民の税金と借金で賄われているのです。一体、何を恐れているのでしょう?
実は他国と異なり帳簿方式の日本は、「消費税」と呼び得ません。商品の価格、仕入れ先に支払った税額等の明記で控除額を確認し、脱税や二重課税を防ぐ「インヴォイス」の導入こそ、元請けの横暴に苦しむ中小企業に福音を齎すのです。
更にイギリスは、医療費、教育費は非課税。食料品、新聞・書籍、医薬品、公共交通、上下水道、住宅建築はゼロ税率。家庭用燃料、電気代は5%軽減税率。その上で、他の領域が税率2桁台の付加価値税。日本も、付加価値税としての消費税の議論をすべきです。
併せて、巨額の公的資金で救済された大手銀行は未だに1行を除いて法人税を1円も負担せず、全法人の3割に過ぎぬ黒字法人のみに法人税の加重な負担を押し付ける奇っ怪ニッポン。納税者番号制に留まらず、法人の「支出」を課税ベースとする外形標準課税=キャッシュフロー法人税の導入も含めた抜本税制改革を敢行せずして、民主党の支持母体たる労働組合のベア交渉にも似たチマチマとした消費税率論議など本末転倒です。
とまれ、「官から民」ならぬ「菅から官」へと、“草の根”市民運動の草冠を放り出して迷走する政権に対し、僕だけでなく亀井静香、小沢一郎、中川秀直、渡辺喜美と想像を超えた面々が、「増税で経済成長は語るに落ちた理屈」だと同じ発言を行っています。「大きい政府VS小さい政府」の不毛な二元論を越えたレジスタンス戦線が、政界再編に向けて組まれつつある、と捉えるべきかも知れません。