12/03/01 「機能しなかった津波警報」から1年◆日刊ゲンダイ

自由民主党の小野寺五典氏は、真に僕が畏友と呼び得る人物。気仙沼市、南三陸町を含む宮城県第6区選出代議士です。
彼は2010年3月11日、東日本大震災発生の丁度1年前、衆議院災害対策特別委員会で以下の提言をしています。「津波防災支援システム」を国民の為に活用せよ、と。が、その警告は“縦割り行政の弊害”で活かされず、1年後を迎えます。
三陸沿岸には、GPS=衛星測位システムに連動の波浪計ブイを計7個、国土交通省港湾局が設置しています。沖合で計測された波浪は今回、約6mでした。沿岸に到来する津波の高さは、経験則で4倍~5倍。即ち20mを超える大津波です。
が、地震発生3分後の14時49分に国交省外局の気象庁が発した津波警報は、宮城県6m、岩手・福島両県3mでした。25分後の15時14分頃に来襲した津波は最大浸水深16m、最大遡上高40m。津波警報は15時30分、「10m以上」へと「事後修正」されます。
今年2月2日、予算委員会で小野寺氏は発言します。「気象庁が最初に発表した高さを聞いて、各自治体は何を判断したか。消防団は何を判断したか。海岸に行って防潮堤を締めれば、これは防げる高さだ。皆、そう考えたんですよ。家だって、3階に居れば大丈夫だと。南三陸町では、(海岸から約1km離れた)3階建て防災庁舎の屋上まで行きましたが、この一報を聞けば、防災庁舎の3階に居れば問題ないと。石巻市の大川小学校だって、この第一報であれば、他に逃げなくたって大丈夫だと判断したのかも知れない」。
死者・行方不明者1万9千余名、消防職員・消防団員の死者・行方不明者281名。激震後も防災無線は殆(ほとん)どの地域で機能していました。オンラインで気象庁にも繋(つな)がっている沖合波浪計の数値を無視せず、適切に反映した第一報が防災無線で流れたなら、犠牲者は遙(はる)かに少なかった可能性が高いのです。
極めて真っ当な建設的提言です。が、驚く勿(なか)れ、護送船団記者クラブ加盟の新聞各紙は、NHKが生中継しなかった予算委員会に於ける遣り取りを、翌日付紙面で全く報じませんでした。
僕がBS11で毎週土曜22時から担当する「田中康夫のにっぽんサイコー!」2月18日放送分で、彼が図表を用いて慨嘆しながら詳述下さった「機能しなかった津波警報」は、新党日本HPで御覧頂けます。