12/04/02 既得税制にこそメスを◆共同Weekly

政府文書は、「不退転の決意」に基づき、滔滔(とうとう)と謳っています。「税制の抜本的な改革の一環として、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から消費税の使途の明確化及び税率の引き上げを行う」と。
そこで過日、財務省主税局の幹部に尋ねました。「消費増税」という「改革の一環」だけでなく、「二環」や「三環」も御用意されていますよね? 併せて、「税制の抜本的な改革」の「本環」に当たるのは何かを教えて頂けませんかと。暫し沈黙が続きました。
税金は、収入という入口、支出という出口の何れかで徴収するしかないのです。消費税が導入されたのも、入口では捕捉し切れず、給与所得者の内の9割、自営業者の4割、農家等の4割の「九六四」状態が続いているから、せめて出口で公平に、という理屈だった筈です。
が、公正=フェアな納税を実現する上で不可欠な「国民登録番号」の導入は遅々として進まず、入口の不公平感は一向に解消されていません。それは給与所得者VS自営業者だけでなく、企業間にも存在します。
予算委員会での私の質問に対し、野田佳彦首相も財務大臣時代に認めたように、日本では株式会社の7割、連結決算を導入する超大企業も66%が、国税の法人税と地方税の法人事業税を1円も納付していません。「一票の格差」を遙かに上回る不条理です。
その原因は、利益に対して課税する仕組みだからです。例えば、赤字企業を買収し、連結決算に組み入れて赤字転落すると、自動的に7年間、法人税も法人事業税もゼロ円となります。
無論、赤字決算を続けていては、株主総会で糾弾されてしまいます。そもそも、資金力が有るから合併・買収(M&A)も可能だったのです。大半は1、2年で黒字回復しますが、別の企業を翌年に買収すれば、再び同じ繰り返し。歪な資本主義の増殖です。
3割の律儀な株式会社が加重な負担にあえぐ状況を打開するには、支出に対して課税する外形標準課税を全面導入すべき、と本会議の代表質問でも繰り返し申し上げてきました。消費税と同様の発想で、全ての株式会社が広く薄く納めたなら、法人税率を現行の3分の1に引き下げても更に国庫にお釣りが来る計算です。既に地方税では部分的に外形標準課税を導入済み。後は、「税制の抜本的な改革」を断行する信念と覚悟を指導者が持ち合わせているか否かです。
取引明細書=インヴォス導入も急務です。「先進国」で日本だけが未導入の理由を問うと財務省は、複数税率のイギリスの付加価値税と異なり、日本の消費税は単一税率だから、と説明します。が、前回も述べた年間3兆円に上る輸出戻し税が、最終販売業者の自動車、電子機器等の超大企業に還付され、材料や部品の中小納入業者には戻っていない不条理を黙認する理由にはなり得ません。
震災が発生したから、不況だから、デフレだから、今は増税の時期ではない、と主張する政治家や評論家は、名目3%、実質2%の成長率をクリアするのが大前提、と唱えます。が、昨今は成長率という数値が、消費や投資の動向と連動しなくなっています。説得力に欠ける”条件闘争”です。
実は、他の既得権益には手を付けず、一時的な税収増で、その場しのぎを狙うのが、消費税率の引き上げ。「税制の抜本的な改革」とは対極です。その意味では、「財政の健全化」なる錦の御旗を掲げる面々こそは、重厚長大な既得権者を擁護する「守旧派」に他なりません。