12/06/11 弱きをくじく失政◆共同Weekly

「信なくば立たず」。民の政治への信頼なくして社会は成り立たない、と孔子は説きました。なのに、理に叶った方策も説明も打ち出せぬ、行き当たりばったり泥縄式の政治が続いています。
大増税も再稼働も、国民から信頼を得られていない野田佳彦宰相は、全身全霊を傾けると記者会見や国会答弁で意気込む前に、孔子の警句を拳々服膺すべきです。
共同通信が5月末に実施した世論調査で56.8%が消費増税に、原発再稼働にも56.3%が反対しています。消費増税も原発再稼働も急務・不可避、と社説を展開し続ける複数の全国紙でも、同様の調査結果です。
全国津々浦々で真っ当に働き・学び・暮らす国民の民意が未熟なのですか? いいえ、違います。お小遣いが足りないから上げてくれ、と勉学に励みもせずに甘える子供の言い分を、そのまま受け入れる親馬鹿な有権者ではないのです。
強きを助け・弱きを挫く益税・損税の不条理を生まない為にもインヴォイス=取引明細書の導入を。株式会社の7割、連結決算を導入する超大企業の66%が法人税も法人事業税も納めていない不条理を解消すべく、消費税同様に利益でなく支出に課税する外形標準化の導入を。本会議の代表質問でも当欄でも繰り返し求めてきました。
こうした抜本的税制改革を断行せず、食料品等の税率だけ5%に据え置く軽減税率でお茶を濁そうとしています。これぞ御為倒し。どの品目に適用するか、業界団体や所掌官庁の声の大きさに左右される時代錯誤な裁量行政の復活です。
何れの世論調査でも“縮原発”が民意として示されているにも拘らず、「フクイチ」を含めて全国に54基存在する商業用原発の安全度を如何に高め、と同時に依存度を如何に下げていくか、その工程表を3・11から1年以上経過するも国民に示さぬ儘、再稼働させねば日本経済と国民生活が破綻する、との“ブラフ”に終始。耐用年数の40年を迎える美浜原発は「安全」が確認されたので運転し続けると強弁。夏休みの絵日記をサボっていた子供が始業式直前に両親に泣き付くのと同様、出たとこ勝負の醜態です。
震災瓦礫の広域処理こそ、笑止千万です。2000万トンに及ぶ阪神・淡路大震災の瓦礫は実質1年、都合2年を経ずして被災地で処理し終えました。それよりも総量の少ない東日本大震災の瓦礫は1年経過しても僅か1割しか片付いていません。
斯くも慨嘆すべき政治主導の失政を目眩ましする思惑か、20%の瓦礫を全国で分かち合ってこそ日本の絆と叫んでいます。ここでも残り70%を被災地で如何に処理するか、何ら工程表が示されぬ本末転倒振りです。
1兆円以上の公的資金注入を実施し、議決権の過半数を国が握る東京電力の総合特別事業計画こそ、社会主義計画経済の悪夢。一時国有化は銀行の債権を守り、天下りポストを増やし、負担は国民に押し付けるモラルハザードに他なりません。往時の国鉄分割・民営化に学び、賠償を行う清算会社としての東京電力と、供給を担う新生会社としての関東電力に、今からでも方針転換すべき。
が、喧伝(けんでん)されるのは、自由競争で料金低下、安全強化、サーヴィス向上を図る発送電分離なる惹句(じゃっく)ばかり。それこそは、理ならぬ利ばかり追い求め、カリフォルニアに「無計画停電」の悲劇を齎し、2001年に破綻した市場原理主義の鬼っ子・エンロンの二の舞です。
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