トップページに戻る


 
表 題
掲載日
【“共謀罪”は廃案か抜本修正を】
2006.04.27
【海兵隊移転費の負担は法人税増税で】
2006.04.25
【揺らぐ“沖縄人の心”】
2006.04.21
【郵便サービス切り下げが始まった】
2006.04.18
【政治介入受けない食品安全委員会に】
2006.04.13
【子育て支援の財源は金持ち優遇税制是正で】
2006.04.03
【公団民営化擁護に必死の小泉“ダミー”】
2006.03.27
【在沖海兵隊一部移転に負担1兆円とは】
2006.03.14
【“道州制”は地域住民が望むものなのか】
2006.03.06
 
 

【“共謀罪”は廃案か抜本修正を】


 犯罪の企てを話し合っただけで罪となる「共謀罪」の創設を盛り込んだ「組織的犯罪処罰法改正案」の審議が強行されている。
国際的な組織犯罪を防止するためとされるが、規定があいまいで市民団体などにも適用される恐れがあるという強い批判があり、これまで二度も廃案になった法案だ。
 与党側は今国会の成立に強硬姿勢で、4月21日に衆議院法務委員会で提案理由説明を強行し、25日には委員長職権で委員会を開いて強引に審議を進め、強行採決も辞さない構えだ。

(会社や市民団体も規制対象の恐れ)
 共謀罪は、懲役または禁固4年以上にあたる犯罪を「団体の活動として」行うことを合意した者を罰する内容。国連の国際組織犯罪防止条約に伴うものだが、対象となる罪は殺人など凶悪事件にとどまらず、600以上に及ぶ。
 以下、日本弁護士連合会の反対理由だ。
▼憲法や刑法では、犯罪の実行行為に着手したことが明らかな場合だけ処罰できるのが大原則で、殺人や強盗など凶悪犯罪で準備行為を処罰することは認められているが、共謀罪ではそれ以前の関係者が犯罪を起こすことを合意した段階から処罰できる。恣意的な処罰の危険性があり、表現、集会・結社、思想信条を処罰することになりかねない。
▼規制の対象となる団体の要件があいまいで、法律の目的の「国際的犯罪組織」に限定されておらず、本来犯罪性のない会社や市民団体も対象となる。
▼人々の会話・電話・メールの内容そのものが犯罪となるため、盗聴法の適用範囲の拡大など犯罪捜査が変わり、“監視社会”をもたらす。日弁連の強い反対は至極妥当と我々は考える。
 このため与党側も共謀罪の対象を「目的が罪を実行することにある団体」に限るなど、法案を一部修正した。
 それでも、この法律は「極めてあいまいな規定で、広範囲の団体が網にかかる恐れがある」という批判が依然強い。民主党は対象を「国際的な性格を持つ犯罪に限る」などとした修正案を提出するという。

(“治安維持法”の再来はごめん)
 この共謀罪、国際組織犯罪防止条約に伴い、各国で議論されてきたが、主要先進国でこれまでに設けたのはアメリカとイギリスだけという。それだけ表現の自由などに対して「危険な法律」というのが国際的な認識だ。法律を設けた米英両国は国際テロに直面しているのも事実だが、伝統的に表現の自由が保証されてきた社会ゆえに国民が許したとも言えるだろう。
 振り返って日本は、戦前に共産主義の取締りを目的にした「治安維持法」を濫用して、捜査当局が「体制に好ましくない」と判断した人物を手当たりしだい予備拘束して弾圧した歴史を持つ。表現や思想信条の自由を守るためには、捜査側に恣意的な判断の余地が残る法律はあってはならない。
 組織的犯罪処罰法改正案は廃案にするか、処罰の対象を狭く限定した抜本的修正を求める。

ページトップへ   
 
 

【海兵隊移転費の負担は法人税増税で】


 沖縄駐留アメリカ海兵隊の一部をグアムに移転させる費用の日本の負担分が決まった。額賀防衛庁長官が4月23日、ラムズフェルド国防長官と会談し、約7000億円を日本が負担することで合意した。
海兵隊の普天間飛行場を移設する費用を含めると、1兆円を超える。
 このままでは財政再建のためとして進められる増税で“日本の防衛とは関係ない”アメリカ軍への莫大な贈与が賄われことになる。

(沖縄の負担軽減と言うが・・・)
 在日米軍再編で最大の在沖縄海兵隊再編案は、司令部や後方支援部門を中心に駐留部隊の半数にあたる7〜8千人をグアムに移転させる、普天間飛行場を返還し、代わりの飛行場を沖縄本島北部に建設するというものだ。
 グアム移転費用について、アメリカ政府は総額102億ドルと見積もり、その75%を日本政府が負担するよう求めていた。これに対して日本政府が減額を求め、結局、59%、60億ドル(約7000億円)の負担になった。
 「安くなってよかった」と政府は言うのだろうが、そうはいかない。
元々、総額102億ドルはアメリカ側が“ふっかけてきた”数字のうえ、アメリカ領土内の米軍施設に日本政府が税金を出すのは前代未聞で、それなりの理由が要るからだ。アメリカ政府は、沖縄の負担軽減を求める日本の要請に応じるのだから当然と言い、日本政府もある程度の負担はやむを得ないとする。一見、もっともらしいが、はたしてそうか。
 まず沖縄の負担軽減だが、海兵隊の実戦部隊は今後も沖縄に残る。このため訓練による被害などは減らず、沖縄で犯罪を犯すアメリカ軍人の大半が海兵隊の実戦部隊の兵士であることを考えると、“軽減”は限定的なものにとどまる。
 そして何よりも問題なのは、海兵隊が日本の安全保障とは関係なく、沖縄に駐留し、グアム移転もアメリカの都合によるという点だ。
アメリカは世界戦略の中で海兵隊を、世界各地の紛争地域に真っ先に投入する「緊急対応部隊」と位置づけている。他方、東アジアでは朝鮮半島有事は差し迫った問題ではなくなり、台湾有事で中国と武力衝突した場合でもアメリカは陸上兵力の投入は考えていない。沖縄の海兵隊の存在は日本や東アジアの安全保障とは関係なく、日本の思いやり予算で“安上がり”で“居心地がよい”から駐留しているに過ぎない。
 そして今回、世界的な基地再編の一環としてグアム基地の機能を強化する方針に沿って海兵隊を移転させる。「日本の要請」は装っているだけだ。そうでなければ、あのアメリカが“安上がり”な日本の基地を手放すはずがない。
 それなのに、グアム移転費を日本が負担するという。かたや政府・与党は財政再建のためとして着々と増税を進め、国民から吸い上げた血税が“日本の防衛とは関係ない”アメリカ軍への莫大な贈与に使われる。
 一方、普天間飛行場の移設もアメリカは、市街地の中にあって危険な基地の返還を求める沖縄県に応えたものだと言うが、実態は手狭になって役に立たなくなったからだ。もちろん移設先の建設費は日本政府の負担で、アメリカ軍はハイテクを駆使した代替基地をただで手に入れることになる。

(負担するなら法人税増税で)
 グアム移転費に、代替基地建設費を合わせると1兆円を超え、これ以外にも今回の在日米軍再編で日本側が負担する経費は2兆円かかるという。
 小泉政権の5年間で、日米安保がいつの間にか“日米同盟”という言い方に変わり、かつて「ただ乗り」との批判もあった日本の安全保障からアメリカの世界戦略を日本が支援する体制に変質した。日米同盟の変質は、経済同友会など財界3団体が求める「グローバルな自由市場の拡大・維持のためのアメリカの軍事行動に対する軍事的支援」という経済界の意向に沿ったものだ。在日米軍再編への日本の負担も、その文脈で捉えるべきものなのだ。
 ならばこそ、日本の負担分を国民への増税でまかなうなどはもってのほかだ。
 アメリカの世界戦略への協力を財界が主張しているのだから、法人税の増税でまかなうべきなのだ。
 4月23日に行われた山口県岩国市と沖縄県沖縄市の市長選挙で、政府の進める米軍基地再編に反対する候補が当選した。住民を無視した在日米軍再編と際限のない財政負担に、国民の怒りは臨界点に達している。

ページトップへ   
 
 

【揺らぐ“沖縄人の心”】


 在日米軍再編に伴う普天間飛行場の移設問題で“沖縄人の心”が揺らいでいる。
 代わりの基地を沖縄本島北部に建設する計画について地元の名護市は、経済振興策と称するカネの見返りに受け入れた。そして沖縄県の稲嶺恵一知事も国から決断を迫られている。
 しかし県までも永続的な基地の建設を無条件で認めると、「強制された基地の重圧ゆえに整理・縮小を求める」という、これまでの“沖縄の論理”が今後、成り立たなくなる。そして大和人(=沖縄で言う本土の人)から「一部の地域だけでなく県民の多くがカネで転んだ」というイメージを持たれ、“沖縄人の誇り”を保てなくなる。“心”に関わる問題だけに稲嶺知事の苦悩は深い。

(追い詰められた稲嶺知事)
 「基地の中にある」とも言われる沖縄だが、広大な軍事基地は全て戦中・戦後にアメリカ軍が土地を接収して建設し、地元の同意を得たものはない。
 それゆえ沖縄県は時の知事が保革に関わらず、日米両政府に「強制された基地の重圧に苦しむ現状」を訴え、基地の整理・縮小を求めてきた。
 また人々の気持ちの持ち方としても、基地の見返りの公共投資に経済を依存しながら、「強制された基地」という前提に立つことで、微妙な精神的バランスを取り“沖縄人の誇り”を保ってきたとも云える。例えば基地で働く従業員の労働組合が「基地反対」を叫ぶという、一見、矛盾した行動がそれだ。
 だからこそ、99年に普天間飛行場の代わりの基地を県内に建設することを受け入れた際に、稲嶺知事は基地の恒久化を防ぐ「使用期限15年」と基地を県民の資産に転じる「軍民共用空港」の2つを条件にした。
 基地に協力する見返りに経済振興策を求める経済界に担がれて知事になった稲嶺氏だが、戦争体験を持ち、米軍統治下の戦後を生きた氏としては基地の固定化を避け、“沖縄の論理”“沖縄人の誇り”を守るのに譲れない一線だった。
ところが去年10月に国が出した計画は、この2条件を無視したものだった。
 稲嶺氏は拒否したが、地元・名護市は同意した。
「強制的に作られた」のではない、“永続的な軍事基地”の建設を沖縄県として初めて認めるのか、追い詰められた稲嶺知事は新たな条件を国に求めるという。

(“誇り”を取り戻したフィリピン国民)
 基地建設反対を貫いて98年の選挙で稲嶺氏に敗れた大田昌秀前知事(現参議院議員)はフィリピンの例を指摘して、「沖縄人よ、誇りと勇気を失うな」と説く。
 フィリピンでは「アメリカ軍基地が国家主権そのものを侵している」として議会の決議で1992年に基地を撤去させた。エストラーダ副大統領(当時)は「主権国家の誇りを取り戻すことができた」と話した。
基地経済に大きく依存していたフィリピンはその後、アセアン諸国が経済発展する中で経済の低迷が続き、海外への出稼ぎが最大の産業だ。しかし、その出稼ぎの自国民がイラクで武装勢力に人質にされ、軍の撤退を要求された時、アロヨ大統領は「海外にいる自国民を守るのが最大の国益」と述べ、フィリピン軍を撤退させた。“民族の誇り”がアメリカに物を言える国にしている。同じ状況に置かれた小泉政権が「自己責任」と冷たく言い放ったのとは対照的だ。
 日本人全体の“誇り”も問われている。日米同盟によって日本の安全を保っているのだから負担は当然という意見もあるが、当の海兵隊はアメリカの世界戦略の中で「緊急対応部隊」と位置づけられ、日本の安全保障とは関係なく沖縄に駐留する。その海兵隊の基地を、地元の誇りを傷つけてまで沖縄に押し付ける対米追随の政府に、本土から反対する声はあまりにも小さい。
 沖縄では今年12月に知事選挙が行われる。“沖縄人の誇り”が争点になる。

ページトップへ  
 
 

【郵便サービス切り下げが始まった】


 「郵政民営化」総選挙から7か月。来年10月の民営化実施に向けて、郵便事業の合理化=郵便サービスの切り下げ、一方で金融事業の拡大が始まった。選挙で我々が強く警告した通りになろうとしている。
 「民営化すれば全てうまくゆく。サービスは低下しない。」と言い切った小泉自民党に投票した多くの人たちにとって「自己責任」かもしれないが、地域によってはかなり住民に影響が出そうだ。

(金融事業は拡大路線)
 日本郵政公社は来年10月の民営化までに、集配業務を行う全国4,700の集配郵便局を集約し、約1,000局を窓口業務だけ行う無集配局にする方針を既に決めているが、集配エリアの拡大に伴って郵便物の配達や集荷が遅れることを懸念する声が強まっている。さらに郵政公社は残る集配郵便局についても、窓口が閉まる午後5時を過ぎても午後6時まで郵便物を受け付ける「時間外窓口サービス」を今年9月以降、廃止する方向で検討を始めた。
 また、現金自動預払機(ATM)についても「利用の少ないものは撤去したり、取扱時間を短縮することもあり得る」という。
 まさに郵政民営化による「サービス低下や過疎地の切り捨て」だ。
一方で、民営化後は持ち株会社になる「日本郵政」は三井住友銀行元頭取の西川善文氏を社長に迎え、金融事業では拡大路線に走り始めた。
 郵政民営化で発足する「郵便貯金銀行」の直営店を全国で200店以上設ける検討を進めているほか、西川社長は郵便貯金や簡易保険の限度額の撤廃や政府の介入の排除を訴えている。これに対して民間の金融機関から「民業圧迫」という強い批判が出ている。
民営化と言いながら当面は株式を国が所有し、固定資産税は軽減されるなど実質「国営」であり、新たに出現する巨大「国営銀行」「国営保険会社」が野放図な業務拡大で民間を圧迫し、サービスの切り捨てで国民にしわ寄せが来る、という我々の主張が現実になろうとしている。

(国債で“塩漬け”の郵貯資金)
 そのうえ小泉首相が総選挙で叫んだ「官の無駄遣いをやめ、郵貯・簡保の資金を民間の必要なところに使う。官から民へ。」という言葉もウソだったことが次第に明らかになってきた。
 郵貯資金の半分以上を使って買い支えている国債は、国債市場が混乱するため大量には売れず、今後、金利が上がると国債の価格が下がってしまい、郵便貯金会社は大きな損失を抱えてしまうというのだ。こうなると「民間の必要なところに資金を」どころか、郵便貯金会社救済のために、多額の税金の投入が必要になるという最悪のシナリオだ。これが「小泉郵政民営化」の真相だ。
 郵政民営化を監督する「郵政民営化委員会」も既にスタートしたが、将来の国民負担を避け、かつ郵便サービスを低下させないために、真の郵政改革を一から練り直さなければならない。

ページトップへ  
 
 

【政治介入受けない食品安全委員会に】


 アメリカ産牛肉の輸入再開に際して、BSE(狂牛病)のリスクを評価した食品安全委員会のプリオン専門調査会は、委員12人のうち半数の6人が3月末で辞任する異例の事態になった。辞任した委員らは「政府の都合のいいように結論を決めようとした」と批判している。
食品安全委員会は、03年に設立された内閣府の独立機関で、食品が健康に及ぼす影響を科学的に調べるリスク評価が主な仕事だが、その独立性が今問われている。

(怪しい“前提”では科学的評価できない)
辞任した元委員らは「アメリカで特定危険部位の除去などが適正に行われるという前提付きの不十分な審議しかできなかった。責任を感じたので辞任した。」と話しているという。
プリオン専門調査会での審議経過だ。
 03年12月にアメリカでBSEが見つかり、牛肉輸入が禁止される。
すると調査会は翌04年春に、どこからも諮問を受けていないのに、なぜか“自主的”に「日本国内の全頭検査を見直すかどうか」検討を始め、「生後20か月以下の若い牛はBSEにかかっても病原体の蓄積が少なくて検出できない」と答申する。これを受けて厚生労働省は国内のBSE検査から20か月以下を除外することを決める。
 辞任した委員の一人は「全頭検査の緩和策について調査会で検討を始めたのは、日米事務レベル協議の前日。輸入再開に向けた条件整備のためで、政治的誘導があったのは明らかだ。」と話す。
 その日米事務レベル協議では、BSE検査が殆ど行われていないアメリカに合わせて、20か月以下で特定危険部位を取り除くことを条件に、BSE検査なしで輸入再開を目指すことで合意した。
 そして本番のアメリカ産牛肉のBSEリスク評価では、プリオン専門調査会は「輸出条件が守られれば、国産牛肉とリスクはほぼ変わらない」と答申し、去年12月に輸入禁止は解除された。
 しかし調査会の座長代理だった元委員は日刊ゲンダイのインタビューに対し、「十分な議論も検証もされないまま、輸出条件が守られると言う前提つきで議論が進められ、輸入再開に向けてことが運んでしまった。本来なら前提に対しても科学的に検証しなければならない。議論の前提が怪しいのに科学的に正しい評価ができるわけがない。」と言う。

(政治介入受けない独立組織に)
 プリオン専門調査会のリスク評価は、輸入禁止解除後わずか1か月で“前提”が崩れ、破綻する。現地で除去されているはずの「特定危険部位」の背骨のついたアメリカ産牛肉が1月に成田空港で見つかり、再び全面禁輸になった。
 これについてアメリカ政府は「日本への輸出条件が徹底する前に起きたレアケース」と説明するが、その後も「背骨」の付いたアメリカ産牛肉が香港で2回も見つかっている。
 BSEの牛肉を食べて新型ヤコブ病に罹って死亡するのは交通事故で死亡するよりはるかに確率が低いと考えるアメリカと、手間やコストがかかっても可能な限り対策をとるべきだと考える日本、食の安全に対する文化の違いが背景にあるのは明らかだ。
 それゆえ、ウラでアメリカの圧力に屈した小泉首相は、消費者に説明できずに表向きは「輸入を再開するかどうかは科学的知見に基づいて判断する」と言い続け、食品安全委員会を利用し「科学的」を装った。
 座長代理だった元委員は「輸入再開を逡巡していると厚労省や農水省の担当者が『政府が責任を持ちますから』と説得に来た。最初から結論が決まっていたとしか思えない。だったら議論も科学的な検証も必要ないはずで、結局は輸入再開に専門家の“お墨付き”を与えるだけの調査会になりかねない。」と話したという。
 国内でのBSEの発生や食品の不正表示などをきっかけに発足した食品安全委員会、設立目的は食の安全のためだったはずだ。消費者の信頼を回復するには、あらためて政治的な介入を受けない、完全に独立した組織にしなければならない。

ページトップへ  
 
 

【子育て支援の財源は金持ち優遇税制是正で】

 新学期が始まった。子供を持つ家庭には何かと物入りの季節だ。
自民党の税制調査会でさえ、子育て支援の税制拡充に向けた検討を進めている。政府・与党の少子化対策の目玉にするためだそうだ。
確かに今の日本、子育て、特に教育費に金がかかる。公教育への不信から中学受験熱が高まるが、進学塾の費用が年間100万円というのもざらで、中学・高校6年間の教育費は公立300万円に対し私立700万円と2倍以上だ。
 一方で、所得格差が広がり公立高校では、保護者の収入が低く授業料の減免を受けている生徒が04年度で8.8%、最も高い大阪では25%にも達している。
 小泉首相は「格差があるのは活力ある社会」と言うが、親の所得によって競争のスタートラインにすら着けない子供が増えている。子育て費用が少子化の原因の全てではないが、この問題への対策が出生率を上げる前提条件だ。

(税額控除にも問題点)
 自民党税調が検討しているのは、所得税の「税額控除」だ。現在の所得控除制度は、15歳以下の子供なら「扶養控除」で一人につき38万円を“所得”から差し引き、16歳から23歳までなら「特定扶養控除」で63万円を引く。例えば、子供が二人で大学生と高校生なら控除額は126万円で、納税者の8割を占める最低所得税率(10%)の層では、126×10%=12万6千円所得税が減るだけだが、最高税率(40%)の高所得者層では、126×40%=50万4千円所得税が減るという“逆進性”がある。今の制度のまま拡充しても経済的理由で子供を持てない家庭への重点策にならない。
 これに対して「税額控除」は、所得税の“税額”から子供の人数に応じた額を差し引くので、所得に関係なく一律の減税になる。子供一人20万円にした場合、先の例で最低所得税率の層では現行制度と比べると、20万×2−12万6千=27万4千円所得税が下がることになる。しかし収入が低く所得税を納めていない世帯や、納税額が控除額よりも少ない世帯には減税効果が及ばない欠点がある。

(ブレア政権の理念)
 この「税額控除」は、イギリスの労働党ブレア政権が導入した児童扶養控除が手本だ。新自由主義の保守党サッチャー政権によって、かつて「ゆりかごから墓場まで」と言われた福祉の削減が進められた後、福祉国家を再建しようと行った、中間から低所得の層に対する所得税減税だ。基本的な家族控除と子供の数に応じて加算される児童控除の二つの部分からなり、一歳以下の乳児や託児・保育サービスを利用している場合は加算がある。税の還付は納付税額の減額ではなく、現金給付の形を取り、所得税を納めていない世帯にも給付される。
 ブレアは首相に就任する前、党大会で「私にやりたいことは3つある。それは、教育、教育、教育だ。」と演説したと言う。福祉依存の生き方は否定するが、子育てや労働によって社会に参画している人に報い、サッチャリズムの競争社会で確保されていなかった“機会の平等”を目指す理念だ。
 日本でも、少子化対策にとどまらず、機会の平等と言う意味からも子育て支援税制は必要な政策だ。

(財源は金持ち優遇税制是正で)
 問題は子育て支援税制の財源を何で賄うかだ。自民党はこの税制の財源に充てるため消費税の増税とセットで検討している。低所得層は所得のうち消費に回す割合が高く、必然的に所得に占める消費税負担の割合が高くなる。このため自民党のやり方は低所得者への増税で子育て支援税制を作ることになる。
 しかし、これは違う。機会の平等を目指す意味からも財源は、先進国で最高税率が最も低い“金持ち優遇税制”の是正によって賄わなければならない。それでなくては少子化対策の効果も半減してしまう。「格差があるのはよい社会」と言い張る自民党ではしょせん、社会格差の是正や少子化対策にも限界がある。

ページトップへ  
 
 

【公団民営化擁護に必死の小泉“ダミー”】

 道路公団の民営化が掛け声倒れになる中、道路関係四公団民営化推進委員会の委員、猪瀬直樹氏がテレビなどで必死の反撃を試みている。
 それもそのはずだ。民営化論議の途中で、無駄な高速道路の建設に歯止めをかけられない“民営化”になり、反発した委員が相次いで辞任したが、猪瀬氏は委員会に残って小泉純一郎のダミーとして最終答申を取りまとめたからだ。

(猪瀬氏の民営化擁護論)
 2月7日の国土開発幹線自動車道建設会議で、高速道路の整備計画9342キロのうち未開通区間の建設方式が全て決まり、2000キロ余りの未開通区間がほぼ予定通り建設されることになった。「抜本的見直し区間」として再検討されていた第二名神の一部、35キロと北海道の一部だけ「当面、着工しない」と条件を付けて先送りにした。
新聞各紙は「高速道全線を建設」「民営化骨抜き」と一斉に報じた。
猪瀬氏の反論だ。
▼自分が01年に道路公団民営化を提起しなければ、整備計画自体が1万キロ近くに伸びていたはずで、9342キロ以内の議論に押さえ込み、建設も残り2000キロに押さえ込んだのであり、骨抜きではない。
▼「見直し区間」は「周辺の交通状況等を見て、改めて事業の着工について判断することとし、それまでは着工しない」という条件がつけられた。少子高齢化で今後の交通量は増えないから永久に着工しないだろう。「高速道全線を建設」ではない。
▼43兆円の借金を45年で返済すると法律に明記しており、国鉄民営化と違い、債務処理に税金は使わず、40年でも十分に返せると考えている、という。

(無駄な高速道路を作る余力はない)
以下、猪瀬氏主張の“民営化効果”の問題点だ。
▼赤字高速道路の建設をあと2000キロに押さえ込んだのが成果というのは、破綻寸前の財政を考えれば、強弁でしかない。この程度なら“民営化”でなくてもできる。しかも無駄な高速道路建設に歯止めどころか、大赤字の区間は全額税金で建設する「新直轄方式」を導入し、少なくとも今後3兆円を投入するようになったことへの弁明もない。
▼「見直し区間」も今後、いつでも着工できる内容であり、新聞が報じたように「先送り」で、「小泉後へ民営化骨抜き」に他ならない。
▼借金の返済計画も、近い将来の金利上昇で計画見直しが必至の上、人口減少で通行量が大きく減ることを見込んでおらず、今後、多額の税金投入が必要になるのは確実だ。
 このように道路公団の民営化は、無駄な高速道路の建設に歯止めをかける当初の目的を果たせなかったのが実態であり、名前だけの“民営化”だった。あれほど騒いだ郵政民営化も同じ末路だろう。それなのに「官から民へ」と民営化すれば全てうまくいくと言い続ける小泉首相。任期はあと半年ゆえに、「言いっぱなしで逃げ切れる」と考えているのだろう。
 日本は人口の減少と共に公共投資の余力も急速に低下し、2025年頃には新しい公共事業どころか、既存の道路など公共施設の維持管理もできなくなるという恐ろしい予測もある。この国にはこれ以上、無駄な高速道路を作る余裕はない。

ページトップへ  
 
 

【在沖海兵隊一部移転に負担1兆円とは】


 在日アメリカ軍の再編で、岩国基地への空母艦載機部隊受け入れの賛否を問う住民投票が3月12日、山口県岩国市で行われ、反対が圧倒的多数だった。米軍再編で3月末の日米合意を目指す政府と関係自治体との交渉は一層難航する。
 この問題で最大の焦点、沖縄の普天間飛行場についても難航している。沖縄の海兵隊再編案は、沖縄本島中部の市街地にある普天間飛行場を返還し、代わりの飛行場を本島北部に建設する、司令部や後方支援部門を中心に駐留部隊の半数にあたる7〜8千人をグアムに移転させるというもの。
 沖縄県の稲嶺知事は代替飛行場の建設場所が、これまでの計画の「海上」から「沿岸部」に変更されたことなどから強く反対している。また、海兵隊の削減といっても実戦部隊は沖縄に残り、訓練による被害などは減らない。
 そして、何よりも許せないのは、アメリカ政府が部隊のグアム移転に伴う費用負担を日本政府に求め、代替飛行場の建設費を含めると、1兆円をはるかに超える私たちの血税が使われることだ。

(沖縄駐留海兵隊とは)
 沖縄駐留のアメリカ軍には、「4軍調整官」という役職がある。陸・海・空・海兵4軍のトップで、歴代、海兵隊の最高指揮官が就任する。海兵隊は4軍の中でマイナーな存在なのになぜか。太平洋戦争の沖縄戦では、アメリカ軍の主力が敵前上陸を主な役割とする海兵隊だったが、戦後もそのまま沖縄に“居着き”、本土復帰までのアメリカ軍政でも中心だったからだ。
 その海兵隊、沖縄では嫌われ者だ。実弾射撃訓練は本土に移されたが、依然として危険な訓練が多く、しかも沖縄で犯罪を犯す米兵は95年の少女暴行事件等殆どが海兵隊員だからだ。海兵隊さえいなくなれば沖縄の基地問題は九割方解決されると言われる。親米派の多い沖縄県民が実際に求めているのは米軍基地の全面撤去ではなく“本土並み”=海兵隊の撤退だ。
アメリカは海兵隊の沖縄駐留の必要性を、東アジアでの「抑止力の維持」としているが、実は戦略上、東アジアでは海兵隊は必要とされていない。

(海兵隊は東アジアで“想定外”)
 ブッシュ政権のアジアでの軍事戦略は、朝鮮半島有事は差し迫った問題ではなく、軍事力の近代化が進んでいる中国と近い将来、台湾有事で武力衝突する可能性があるという認識だ。同時多発テロ以降、「テロとの戦い」に傾斜したアメリカだが、中国脅威論は基本的には変わっていない。
 その中国から台湾へのミサイル攻撃やシーレーン妨害を受けた場合、航空機による攻撃で対抗するのが基本方針で、陸上兵力の投入は考えていない。
それもそのはずだ。世界一の軍事大国アメリカも世界一なのは空軍と海軍であって、陸軍や海兵隊ではない。イラクでの苦戦を見れば明らかだ。アメリカは中国と「泥沼の」地上戦を行う気はなく、台湾の防衛作戦では敵国への殴り込みを任務とする海兵隊の出る幕はない。朝鮮半島有事が差し迫った問題ではなくなった今、沖縄に海兵隊を常駐させておく必要はなく、グアムで十分なのだ。
それなのに、手狭になって役に立たなくなった普天間を返還する“代償”として、ハイテクを駆使した代替基地をただで手に入れ、沖縄県民の過大な負担に理解を示すと称して、元々駐留の必要のない海兵隊の一部を恩着せがましく移転させるという手法は“日本もなめられたものだ”としか言いようがない。
 そのうえアメリカ政府は部隊のグアム移転に伴う費用を100億ドル(1兆2千億円近く)と算定し、その75%の負担を日本政府に求めている。普天間の代替飛行場の建設費を含めると1兆円をはるかに超える血税が使われることになるが、財政再建のためとして消費税アップを目論む小泉政権は、アメリカの言い値どおりに受け入れるだろう。“反米民族主義者”でなくとも「ふざけるな」だ。

(せめて沖縄から海兵隊の完全撤退を)
 しかもアメリカは戦略的に必要ないのに沖縄駐留の継続に固執する。それは日本の“思いやり予算”によって、駐留経費が世界で最も安いからだ。日本の安全保障とは関係なく沖縄に駐留している海兵隊のために払う「思いやり予算」が日本国民に犠牲を強いるといういびつな構造だ。
 今回の在日米軍の再編は、世界規模で進めている米軍再編の一環で、ブッシュ政権は世界戦略の中で紛争地域に投入する尖兵と海兵隊を位置づけている。
日米同盟を重視するのは勝手だが、先制攻撃を根幹とするブッシュ政権の安全保障論にどこまでもつきあい、国民の犠牲を増大させる小泉従米政権。もういい加減にして、せめて沖縄から海兵隊の完全撤退を実現しなければ国民は納得しない。

ページトップへ  
 
 

【“道州制”は地域住民が望むものなのか】


 首相の諮問機関、地方制度調査会は2月28日、国と市町村をつなぐ広域自治体改革で、都府県を廃止して道州制を導入するのが適当とする答申を出した。
 都道府県を全国10程度の道州に再編し、国や市町村との役割分担は、国は外交や防衛などに限定して、一級河川や国道の管理、大気汚染防止など多くの仕事を道州に移し、都府県が担当する高齢者福祉や建築基準などは市町村に権限委譲するという内容だ。
 そして道州制導入の必要性について「国と地方双方の政府を再構築して、行財政上の非効率や行政手続きの重複が生じている現在の制度を分権型社会にふさわしい効率的な行政システムに変えるため」と答申は言う。
 地方分権の行政システムに変えるという点では異論はないが、なぜ道州制なのかとなると簡単には同意できない。都道府県のまま分権は進められないのか、道州制になれば中央集権の画一的な行政から、地方が住民の要望や地域事情に応じた政策を本当に実現できる社会に変わるのかどうかなど疑問点は膨らむ。
 何よりも答申の考え方が行政運営からの「効率性優先」に貫かれており、住民にとっての利便性や生活への影響という視点が抜け落ちている点が最大の問題だ。中央省庁が簡単に権限を手放すはずがなく、このまま道州制を導入しても権限の移譲が進まない中で巨大な自治体ができるだけになる。
 その点、都道府県側も心配している。全国知事会は、第一に道州制の導入が国民にもたらすメリットや課題を明確に示すことを求め、更に中央省庁やその出先機関の解体再編も含めて役割分担を見直すことや地方に対する国の過剰な関与を排除するための措置を検討することを求めている。
 道州制の区割りについても住民の利便性という発想がないのは同じだ。答申が示した全国を9、11、13に分ける3つの例は、いずれも中央省庁の出先機関の管轄地域に準拠した区割りだ。これに対し、地方制度調査会の委員の堺屋太一氏は「現在の都府県の境界や出先機関の管轄を変えてでも利便性などで区割りすべき」と発言したが、全く活かされなかったという。
 このままでは全国で進む市町村合併で、住民にとってメリットは少なく、地理的にも精神的にも“役場が遠くなる”だけの結果になったように、単なる都府県の合併で“県庁が遠くなった”だけの道州制になってしまう。
 都道府県制度は明治の廃藩置県以来、120年も続いた「国と地方の形」であり、このままでは人口減少高齢社会に対応できず、分権型社会にふさわしい制度の設計が迫られているのは間違いない。それが道州制なのか、我々は上からの効率性のみを優先する考えを排し、「住民にメリットはあるのか」という“生活者の視点”で一から問い直し、徹底的な検討、提案を進めてゆく。

ページトップへ      
 

トップページに戻る

新党日本 
ヘッドオフィス 〒102-0093 東京都千代田区平河町1-7-11〜4F TEL:03-5213-0333 FAX:03-5213-0888