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 「It´s小(ショウ)タイム」  >>タイトルをクリックすると記事がご覧いただけます。
      週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」新党日本代表・田中康夫コーナー掲載より


 2010.02.01  大人の政治
 2009.12.21  J・F・Kの呪縛
 2009.08.10  日本「改国」宣言
 
2009.07.13   衆院選、先頭に立って戦う 政策実現狙い民主党と連立も (Kyodoウィークリー特別インタヴュー)
 2008.10.13  ケインズの至言
 2008.04.28  先手必勝の先例を
 2007.10.08  福田がけっぷち内閣
 2007.06.11  本当の100年安心
 2007.05.14  本末転倒! 3連発

 
 

愉快犯のごとき政府見解【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」5月17日号】

 何とも摩訶(まか)不思議な話です。政党の「略称」に関する規定が公職選挙法上にないから、複数の政党が「同一略称」を掲げて国政選挙に臨むのは致し方ない、と政府は“問題先送り”を決め込んでいるのです。
 新党日本は過去3回の国政選挙を略称「日本」で戦っています。「新党日本」を政党の名称、「日本」を政党の略称として、中央選挙管理会に届け出、受理され、官報にも告示されています。投票記載台の上部に掲出される政党一覧表に、正式名称と共に「略称」が明記されてきたのも、略称での投票を中央選挙管理会が認めてきた証左。政党名も略称も、商標登録などにはなじまないから、官報に告示し、保護してきたのです。
 にもかかわらず、「政党『同一略称』に関する質問主意書」に対する鳩山由紀夫内閣総理大臣名の答弁書は「議論の余地があることは承知している」と認める一方で「現行の公職選挙法が改正されない限り、今後同様の事案が生じても、同様の対応をとる」と驚くべき政府見解を開陳。
 では、法改正を行うのかと思いきや、中央選挙管理会を付属機関に置く総務省の原口一博大臣は会見で「わたしたちには止める手だてがない。総務省の権限を越えている」と傍観者的発言。掛け声倒れの「政治主導」はここでも迷走しています。
 総務大臣には、有権者や候補者、報道機関をはじめとする国民の間に、「同一略称」が理由で混乱・誤認、迷惑・被害が生じるのを回避する責務があります。テロ勃発(ぼっぱつ)も金融危機も、前例がない、規定がない事態だからこそ、他国は混乱を防ぐために「政治主導」を発揮しているではありませんか。
 同一略称問題は、たちあがれ日本と新党日本の2党間の問題にとどまりません。
 仮に5人の国会議員が新党「まともな民主」を結党、略称を「民主」とし、あるいは「自由民権党」を結党、略称を「自民」で届け出た場合も、さらには既存政党の社会民主党が「社民」から「民主」へと略称を届け出変更した場合にも、同様に受理し、官報で告示すると、総務省自治行政局選挙部は愉快犯のごとき見解を明言しています。
 「日本」と記した一票は二つの政党に案分すると政府は答弁書で示す一方、届け出略称以外の「たちあがれ」と記した一票は他に類推される政党が存在しないから、たちあがれ日本の得票だと、「一粒で二度おいしい」見解も述べる始末。
 新党日本との混同を防ぐべく、複数の報道機関は現在、「たち日」と表記しています。有権者に対する善意の配慮と言えましょう。が、今後、官報に「同一略称」が告示された場合、報道機関は苦渋の決断を迫られる事態に陥ります。
 憲政史上、類を見ない混乱・被害の発生が不可避にもかかわらず、各政党代表者が一堂に会して善後策を協議する円卓会議を開催する意志すら見せぬ政府は、「行政の不作為」とも言うべき状態で、そのガバナビリティー(統治能力)を疑います。
 今回の「同一略称」問題は、混迷ニッポンを象徴しています。沖縄の米軍普天間飛行場移設問題、日本航空の経営再建問題と同様、これこそ、哲学も覚悟も持ち合わせぬ“洞察力なき政治‘で生じた、「政治不信」の増幅ではありますまいか。


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コンシューマーインの社会に 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」4月19日号】

 消費者庁が発足してから半年余り。が、この間、話題となったのは、NTTドコモも本社を構える超高層ビル山王パークタワーの家賃が高過ぎる。他方で、職員定数が僅か202名では何も出来ない等々。相も変わらぬ感情論、観念論に終始し、アメリカに端を発した「トヨタ・リコール問題」を始めとする具体的課題への「成果」を問う段階に至っていません。
 「ウォール・ストリート・ジャーナル」への寄稿で豊田章男社長も認めるように、既に導入済みの欧米車、そして日産車同様、トヨタ車へも「ブレーキ・オーバーライド・システム」を速やかに搭載してこそ問題解決の第一歩。ブレーキ・ペダルが踏まれたら、即座にエンジン出力をカットする“フェイル・セーフ”システムです。
 踏み込んだアクセル・ペダルが何故か元に戻らない。或いは、電子制御装置が加速の指示を出し続けたまま解除されない。こうした故障や設計上の不具合という“失敗=fail”を食い止め、“安全=safe”を取り戻すのが、フェイル・セーフの哲学です。それは、「科学を信じて・技術を疑わず」から、「科学を用いて・技術を乗り越える」発想への転換です。
 製造者は機械工学や電子工学の専門家です。運転の技能=テクニックも感覚=フィーリングも、多くの消費者より遙かに優れているでしょう。しかし、それぞれの運転の現場に居るのは、製造者ではなく消費者なのです。どんなに未熟な運転者であろうとも、減速すべきとブレーキを踏んだなら、その判断と意思を最優先すべきです。  2年前の施政方針演説で福田康夫首相は述べています。「これまでの生産者・供給者の立場から作られた法律、制度、更には行政や政治を国民本位のものに改めなければなりません。国民の安全と福利の為に置かれた役所や公の機関が、時として寧ろ国民の害となっている例が続発しております。私は、このような姿を本来の形に戻すことに全力を傾注したいと思います。食品表示の偽装問題への対応等、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進する為の、強い権限を持つ新組織を発足させます」と。
 その意気や良し。「消費者の視点から強力な権限を有する消費者庁」は、トヨタ車に留まらず、全ての国産車・輸入車へのブレーキ・オーバーライド・システム搭載を法制化すべきです。 食の安心安全も、長野県知事時代にソムリエの田崎真也氏とワイン、日本酒、焼酎、米、牛肉の分野で確立した「原産地呼称管理制度」を全国で全面導入し、産地・品質に関する客観的指標を明示するのが肝要。
 何れも、僅か202名の職員でも十分実施可能な施策です。即ち消費者庁が車、食に留まらず安心安全の全体戦略を示し、“現業官庁”としての実施を国交省、経産省、警察庁、農水省、厚労省を始めとする他省庁に求めるのです。
 「プロダクト・アウト」と「コンシューマー・イン」という用語を聞いた事があるでしょう。前者は供給側の都合で生まれた商品。後者は消費側の希望に根差した商品を意味します。コンシューマー・インの社会を日本で実現出来るか否か、まさに「国民の安全と福利の為に置かれた役所や公の機関」の責任者たる担当大臣と首相の覚悟が求められているのです。


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覚悟を決めよ、鳩山政権 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」3月8日号】

 生活保護世帯が急増しています。昨年末に全国で130万世帯となり、1989(平成元)年の65万世帯から20年間で倍増しているのです。生活保護人員は180万人。驚くなかれ、私の選挙区、尼崎市では20世帯に1軒が生活保護世帯、その予算総額は313億円で、尼崎市の一般会計予算に占める割合は16.7%にも上ります。加えて看過し得ぬのは、生活保護世帯への「優遇」ぶりです。
  夫33歳・妻29歳・娘8歳の3人家族に対する生活扶助は月間16万2170円。住宅扶助6万9800円、教育扶助1万330円も合わせると計24万2300円。20〜30代の単身者の場合、計13万7400円。いずれも、医療費は全額無料。さらには住民税など、すべて無税・非課税なのです。
 日本では、年収100〜200万円の勤労者が全体の12.6%、200〜300万円が12.8%。まさに「勤労者よりも恵まれた『不労所得』環境!」。所得税も住民税も国民年金も健康保険も給与から差し引かれ、働いても一向に苦しい方々が知ったなら、怒髪天をつく、でありましょう。
 今や生活保護の年間支出総額は3兆円。他方で、収入を得て、生活保護から次年度に脱却する割合は、わずか3%にとどまります。「働けるけど働きたくない」人々を増長させる制度の下、扶助費は増大し続けています。
 40年間にわたって納めても、国民年金は月額6.6万円。他方で70代単身世帯の生活保護受給額は12万円と約2倍。手厚い保護が新たな「格差」を生んでいるのです。
 にもかかわらず、自治体から悲鳴が上がらないのは医療扶助も含めて全額国庫負担だからです。自治体が運営する福祉事務所の、全国で1万5千人にも上るケースワーカーの人件費も全額国庫補助。自治体にとって痛くもかゆくもない“モラルハザード”状態だからなのです。
 既存政党のいずれもが、消費税1%分をはるかに上回る生活保護予算こそ「事業仕分け」すべし、と主張しないのも、もしや、受給者とすべく口利きして、恩義を忘れぬ熱心な支持者を確保したいが故ではあるまいかなどと、あられもない夢想をしてみたい衝動に駆られます。
 歴史上に類をみない超少子・超高齢社会ニッポンは、厚生労働省によれば、45年後の2055年には人口が9千万人を割り込むのです。
 2月26日の予算委員会で私は、奇っ怪なる生活保護の現状を語るとともに、いくら年金制度を再構築しようとも、逆ピラミッドの人口構造では持続不可能。抜本的解決として、デンマークをなどの北欧諸国で取り組みが始まっているベーシック・インカム、すなわち赤ちゃんからお年寄りまですべての個人に無条件で最低の生活を保障する制度を、日本でも導入すべき、と鳩山由紀夫首相に提言しました。
 既に「小タイム」でも昨年2月に述べた、ベーシック・インカムは、年金と生活保護の抜本的な統合を図り、役所の裁量行政の無駄を省き、持続的な社会保障を生み出す画期的な試みなのです。夢のような話だ、と鳩山氏は感想を述べました。が、夢を実現してこそ、政治です。それこそは、「人」を大切にする政権に今、求められている「覚悟」です。


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大人の政治  【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」2月1日号】

 
戦略どころか戦術すら持ち合わせていないのに、TVカメラのライトを浴びるや上気して、個人的感想に過ぎぬ発言を繰り出す「スポットライト症候群」が鳩山由紀夫内閣に蔓延しています。
 自由民主党が政権与党時代も、閣内・党内を問わず百家争鳴でした。ですが、それらの議論は何時しか「収斂」し、“沈黙の孤独”を保ち続けた宰相が、満を持して「決断」を下す“大人の政治”だったのです。
 残念ながら、収斂とは真逆の「拡散」発言を首相自ら積極的に実践する現政権では、何れの課題も百家争鳴の先へと進む気配が見えません。自民党にお灸を据えねば、と消去法で民主党に1票を投じた健全なる無党派層は失望し、政治は漂流し始めています。
 では、法的整理と上場廃止へ「進展」した日本航空処理問題は、数少なき鳩山政権の“果実”でしょうか? 否、これこそは「子ども大臣」と「日経ビジネス」が、「週刊文春」も「お子ちゃま大臣」と命名した前原誠司国土交通大臣の未熟さが原因で、日本全体をも揺るがし兼ねぬ、深刻な事態に陥っているのです。
 「政権交代」直後の9月中旬から新党日本は、可及的速やかに法的整理を敢行し、新JAL、旧JALに完全分離した上で再生を図るべき、と主張してきました。
 路線運航権等を新社が買い取り、旧社は負の遺産を清算する。一旦全員解雇し、新賃金体系で希望者のみ新社で再雇用。こうした大手術を執刀せぬ限り、「ナショナルフラッグキャリア」の呪縛から決別し、顧客本位で筋肉質な会社と成り得る筈もありません。
 が、1日当たり10〜20億円もの赤字垂れ流しを都合4ヶ月も放置し続け、無為無策な迷走を続けた前原“戦犯”大臣の指示で、公的機関の企業再生支援機構が纏めた今回の内容は、驚く勿れ、当初計画の2300億円から7500億円へと金融支援が3倍増。政府の口利きで「借金棒引き」が行われるのです。加えて投入される公的資金も4800億円から1兆円へと2倍増。一民間企業に対する前例無き「税金投入支援」に他なりません。
 大盤振る舞いな政府の支援方針に“呼応”したのか、今年度2009年度の連結売上高を1兆3931億円、営業損益を2651億円の赤字と見込む、機構の再建計画も甘チャンそのものです。2010年度には1兆2501億円へと連結決算は減収するものの、営業損益は337億円の赤字へと好転、と高らかに謳うのですから。
 では、利益を僅か1年で2314億円も改善し得る根拠は、と計画書から一例を挙げれば、価格競争激化の御時世をあざ笑うが如く、サーヴィス向上で客単価を2割アップと相も変わらぬ“士族の商法”そのものです。
 「(4761億円もの)一般商取引債権や顧客のマイレージ等を保護。債権者平等負担の原則から逸脱し、実質的には『私的整理』に近い内容」と「共同通信」も看破した再建計画では早晩、2次破綻を迎えるでしょう。
 その際にも「お子ちゃま大臣」は去る1月12日の会見同様、「世界の架け橋となって、日本経済の大きな柱になっている企業・日本航空の再生を、飛ばし続けながらしっかりやっていくのが我々の使命」と“プラザ合意”以前かと聞き紛う時代錯誤な発言と共に、新たな「税金投入支援」を発表するのでしょうか。
 が、その時には流石に、 怒りを忘れた国民も黙ってはおりますまい。支持母体たる連合傘下の労働組合に遠慮して、泣いて馬謖を斬る決断を先送りし続ける民主党が、同じく組合に優しい社会民主党の反対をも押し切り、“大人の政治”で日本を救うか否か、真価が問われています。

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J・F・Kの呪縛  【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」12月21日号】

 事業仕分け、日本航空(JAL)経営再建、米軍普天間飛行場移設。景気と経済対策に公共事業と労働組合の在り方、さらには偽装献金。いずれもが問題先送り、矮小化という未熟な判断ミスが相次ぎ、混迷を深めています。政権交代から100日ー。「J・F.Kの呪縛」が、侵食を拡大しているのです。
 効果ありやなしやと○×式の一刀両断に人々が快哉を叫んだ事業仕分けは早晩、リバウンドに見舞われるでしょう。一例を挙げれば、「自治体に財源を移し、自治体が下水道事業の必要性を判断できる環境を整えるぺき」と、行政刷新会議は国土交通省の下水道事業を判定しました。
が、総人口の18%に上る、山あり谷ありな中山間地を主体とする約750万世帯の汚水処理未整備地区へ下水道を敷設するには47兆円も要するのに対し、環境省が所管する合併処理浄化槽の個別地域設置へと事業そのものを転換したなら、わずか6兆円。現行の下水道新設予算の3年分で完遂可能。かくなる視点が欠落しているのです。
 計画策定から数十年を経ても未完成なダムは無用だとして、治水が不要な訳ではありません。安価な費用で着実な雇用を地域にもたらす護岸補修や河床掘削の予算計上こそ急務。また、功成り名遂げたノーベル賞受賞者に巨額の研究費を拠出するより、必要なのは未来の可能性に賭けて無名の研究者に幅広く数百万円単位で支援するスモールサイエンスの哲学。予算の組み替えを敢行せねば、事業仕分けは「東京裁判」に終わってしまいます。
 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の再生同様、可及的速やかに法的整理の民事再生法か会社更生法を適用し、新旧会社に分離した上、最初で最後の公的資金を投入すべきだったJALも、国土交通相の「鶴の一声」で目下、”検査入院中“。医療崩壊の現場とて、医師が駆け付け、執刀するまで点滴やマッサージを行うのに、無為無策な9月中旬以降の3カ月間に”下血“は悪化の一途です。
 八ツ場ダムと川辺川ダムはマニフェスト(政権公約)に基づき断固中止、と粋がる一方、事業費の7割を国が負担する都道府県のダム計画は、各自治体が主体的に判断する地方自治の範蠕と腰砕けです。実は、北海道も山形も長野も静岡も香川も長崎も熊本も、地元の民主党と労働組合の連合はダム建設椎進派。羊頭狗肉、極まれり。予算の組み替えならぬ、「人よりもコンクリート」へと看板の書き換えを断行すべきかもしれません。
 金融同様、国境を超越した領域の電波に関しても、NTT労組から資金援助を受けて、NTTの再統合を高言する時代錯誤の閣僚が存在しています。
 ご存じJ・F.Kは「ジョン.F・ケネディ」。が、「最良の、最も聡明な人々」が集ったはずのケネディ政権は皮肉にも、あまたの犠牲者を双方に生み出すベトナム戦争の”製造責任者“。デービッド・ハルバースタムは秀逸なるノンフィクション「ベスト&ブライテスト」で、その過ちと泥沼の過程を描いています。
 同じく「最良の、最も聡明な人々」が集う鳩山連立政権も、労働貴族な自治労をはじめとする、今や、推定組織率わずか10%台にすぎぬ組合の意向に左右され、もしや「J・F.Kの呪縛」に陥ってはいまいか。あえて諌口するゆえんです。


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問われている「生活が第一」  【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」11月16日号】

 ダム建設という“大外科手術”を施さねば人命が脅かされる。と河川管理者の国や自治体は終始一貫、流域住民に「警告」を発してきました。けれども、その手術は待てど暮らせど開始されぬ儘、今日に至っています。八ツ場ダムは昭和27年の計画発表から57年、川辺川ダムも42年が経過しているのです。
 縦しんば“医療崩壊”の現場で執刀医が別の手術に掛かり切りだとして、その間も点滴やマッサージは行われる筈です。当たり前の話です。なのに、ダム建設よりも遙かに少ない金額で取り組み可能な護岸補強も森林整備も、河床整理と呼ばれる浚渫も、浸水危険地域の家屋移転や遊水地、放水路の整備も予算計上せぬ儘、ダムさえ出来れば洪水は防げる、と日本の河川行政は“幻想”を振りまき続けてきました。
 八ツ場ダム計画に至っては驚く勿れ、ダム事業の7割が進捗した訳ではなく、既に総事業費の7割を投じても猶、付替道路の1割が完成しただけなのです。本体工事は入札すら未実施段階。今後も巨額の補正予算が組まれるのは必至です。
「洪水は自然現象」です。河川工学者の畏兄・今本博健氏も今週号の論考で看破するが如く、過去最大規模の「どのような洪水を基本高水に採用しようと、それを超える可能性が有る」のです。
 現に、100年に1度の洪水に堪え得ると称して、刈谷田川ダム、大谷ダムが建設された信濃川水系の1級河川では2004年7月、数多くの人命が失われました。降雨量は100年確率にも至らぬ数値で留まったにも拘らず。
 不思議な事に、過去の如何なる水害に於いても、河川管理者は業務上過失致死に問われていません。その責任が確定したのは、「岸辺のアルバム」の舞台となった狛江市の多摩川水害のみ。それとて民事裁判での賠償です。
 地域住民の生命と財産を護るべくダム建設を、と与野党を問わず中央・地方で政治家が高言する“深意”は、結果責任を問われずに不透明な利権を差配し得るから、と勘ぐりたくなります。
 利根川の治水基準点に当たる伊勢崎市八斗島では、過去50年間で最大の流量を記録した1998年の台風到来時に於いても、最高水位は堤防の上端から4 mも下でした。而も、総事業費1兆円近くに達するであろう八ツ場ダムの竣工後も、基準点の水位は13 cmしか下がらない計算です。
 八ツ場ダムは不要無用の公共事業。然りとて、公共事業自体が不要不急なのではなく、前述の堤防補強や浚渫こそは、地域密着型の公共事業として、青息吐息な土木建設業に福音を齎します。
「出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない」と2001年2月に発した「『脱ダム』宣言」に基づき、諏訪湖に流れ込む河川で計画されていた2つのダム建設を棚上げした上で長野県が策定した河川整備計画を国土交通省が認めざるを得なかったのは、多岐に亘る具体的な治水計画を提示したからです。
 新しい治水と利水の価値観も国民に提示せぬ儘、如何なる根拠を以てか、マニフェストに記した2つのダム計画は中止、と“上から目線”で広言しても、長年に亘って翻弄されてきた地域が納得する訳もないのです。その上で一例を挙げれば、明治29年以来、変更されていない慣行水利権を見直すだけでも、利水問題は解決します。
 即ち、ダム建設に伴って道路、観光、福祉等の地域振興を行う“飴と鞭”政策を改め、ダムを建設せずとも、疲弊した地域経済を如何に復興するか、真の意味での「生活が第一」が問われています。



・終焉迎えた”ダム時代”治水、利水効果に疑問符
 今本博健運営委員(京都大学名誉教授)の寄稿

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虚偽許さぬ公文書管理を 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」6月15日号】

 第1面に「密約、外務官僚が管理」の大見出しの下、「東京新聞」を始めとする複数紙が6月1日付朝刊で報じた“スクープ”に関し、河村建夫官房長官は同日午前の会見で、何とも理解に苦しむ“奇っ怪”答弁を行いました。
 いわく、「核持ち込みに関する密約は存在しないと、これまで政府が何回も申し上げてきた」と。藪中三十二外務事務次官も同日、「そういう密約は存在しない。我々の説明は一貫している」と“歩調”を合わせています。
 しかれど記事は、「1960年の日米安全保障条約改定に際し、核兵器を積んだ米銀の艦船や航空機の日本立ち入りを黙認することで合意した『核持ち込み』に関する密約は、外務事務次官ら外務省の中枢官僚が引き継いで管理し、官僚側の判断で橋本龍太郎氏、小渕恵三氏ら一部の首相、外相だけに伝えていたことが31日分かった。4人の次官経験者が共同通信に明らかにした」と報じています。
 加えて、日本への「核持ち込み」は既に、90年代末に米国で開示された「公文書」でも明々白々。にも拘らず、先輩に当たる4人の事務次官経験者の証言を、後輩が否定し、同盟国の公文書に記された「密約」の存在を、日本政府の官房長官が否定するのです。自由民主党は、同盟国の公文書に記された内容をも「虚偽」だと大言壮語するのでしょうか?オバマ米大統領も核兵器廃絶を提唱し、“歩調”を合わせて突如、麻生太郎首相も核廃絶論者に宗旨替えした今日、「事実」を認めぬ政府の時代錯誤振りに、暗澹たる思いです。
 国の文書の保管・管理の統一ルールを規定する公文書管理法案が、今国会で成立する動きを見せています。長きに亘って民主主義国家を標榜(ひょうぼう)する日本に、公文書に関する明確・的確・正確な既定が存在しなかった「事実」自体、驚天動地です。と同時に、遅蒔きながらも審議される運びとなった法案に於いても、「公文書」の定義付けが曖昧な儘なのです。
 現行の情報公開法の実施状況を勘案するに、官庁印が押されていない代物は単なる行政文書に過ぎぬ、と“裁量行政”で役人が判断し、重要な内容が記された文書やメモに限って、逆に意図的に廃棄されたり不存在を決め込まれたりする恐れが高いのです。警察や検察の取り調べ時の書類、更には裁判所の調書に関する既定も極めて不十分。これでは、冒頭で慨嘆した“奇っ怪”事例の二の舞です。
 山国での知事時代、利権とは無縁の「ガラス張り」行政を掲げたればこそ、既得権益の喪失に反発した守旧派県議会議員が意図的に蠢いた、“苦い想い出”が甦ります。彼らは反田中勢力と連携し、十数人の土木部職員が参加した会議で各自に1部づつ配布されたコピーを、出席者の1人が破棄した「事実」を以て、不透明な「磨りガラス」県政を象徴する公文書毀棄だと喧伝(けんでん)、百条委員会まで設置し、私の管理監督責任を追及したのですから。ガラス張りだったが故に足を掬(すく)われそうになったのです。
 とは言え、「官治から民治へ」と改める上でも、公文書管理は急務。にも拘らず、国立公文書館の充実に投じられる予算は未だ微々たる金額。ハコモノ公共事業の一環として117億円の「アニメの殿堂」を建設する前に行うべき、ワイズ・スペンディング(賢い支出)は数限りなく存在するのです。


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社会変えない補正予算 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」5月11日号】

 ピンチはチャンス。とは言え、ピンチに陥った原因を先ずは的確に認識し、その上で従来とは異なる選択を迅速に行わねば、チャンスを果実として結実させる新たな仕組など、構築し得る筈(はず)もないのです。
 にも拘(かかわ)らず、「GDP比3%」の15兆円規模ありきで積み上げられた従来型発想の「追加経済対策」が、今回のバラマキ補正予算。
 “上から目線”な放漫経営者に、「財政規律」を拳拳服膺(ふくよう)させる家庭教師役として登板した筈の与謝野“1人3役”馨大臣が財政演説で、「底力発揮・21世紀型インフラ整備」と宣(のたま)うに至っては最早(もはや)、片腹痛し。
 何故って、公共事業の地方負担分の9割を国が肩代わりする「底力発揮」で、「地方公共団体への配慮」と「地域活性化」を図り、「民需の自律的回復を促す」「内需主導による成長へと経済の体質転換を進め」ると大言壮語されたのですから。
 モラルハザード、ここに極まれり。と呆(あき)れていたら追い打ちを掛けるが如(ごと)く、「追加経済対策の公共事業費の地方負担分に関し、新設する臨時交付金でも賄えない費用を、地方交付税で全額償還する地方債の発行を認め」、「実質的に国が事業費全額を負担する」と総務省が大盤振る舞い。失われた10年の財政出動で、従来型公共事業は“快楽一瞬、後悔一生”な“麻薬転落物語”だと学んだ筈なのにね。う〜む、“過保護な親馬鹿”が「地方分権」の新たな定義ですか、と鳩山邦夫大臣にお尋ね申し上げねば。
 正体見たりなバラマキ振りは、「子育て応援特別手当」と銘打って、3〜5歳のみを対象に3万6千円の1回ポッキリ“給付金”に加えて、本年・来年度絵限定の妊婦健診の公費負担拡充も。詰まりは、来年夏の参院選迄に目出度く妊娠の方のみが対象。実に判り易いポピュリズムではありませんか。ハイブリッド車に留まらず、「環境対応車」購入補助も、羊頭狗肉(くにく)な“グリーンニューディール”。早い話が、急激な輸出の落ち込みで悲鳴を上げる自動車業界の在庫一掃に税金を補填(ほてん)する新たな仕組に他なりません。
 それは冒頭で述べた、チャンスを果実として結実させる新たな仕組とは対極。「ついに見せた自動車への露骨補助」と喝破する碩学(せきがく)・野口悠紀雄氏の言葉を借りれば、「こうした施策に必要な財源は、天から降ってくる訳ではない。何れは納税者の負担になる」のです。詰まりは大幅増税。
 のみならず、「補助を得た業界は、これまでのビジネスモデルを見直す事無く、過剰設備から生み出される過剰供給の捌(は)け口を求めて」「アジア諸国との激しい価格競争に巻き込まれ」「日本の製造業は政府保護に依存する体質を強め、農業がそうであったように衰退していく」のです。
 であればこそ、都市基盤整備への重点投資に転換すると共に、人が人のお世話をして初めて成り立つ福祉・医療・教育・環境の分野へと傾注投資すべき。なのに、「農地の有効利用等に拠り食料自給率の向上に取り組む」と称して自民党は、“今更な”農業土木公共事業に1兆円もの金額を投入するのです。
 他国とは異なり、社会を変える為ではなく、社会を変えない為の巨額の補正予算を計上する奇っ怪ニッポン。真のグリーンニューディールも福祉国家の実現も、遙か彼方の夢物語です。


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メディアも有権者も正念場 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」4月13日号】

 マネジメントの要諦(ようてい)は、人事と予算です。にも拘(かかわ)らず、霞ヶ関の人事と予算を牛耳っているのは、解雇とも倒産とも無縁で、結果責任を問われぬ匿名性に護(まも)られた官僚組織なのです。
 批判を恐れず申し上げれば、与野党を問わず大半の政治家は、慇懃(いんぎん)無礼・面従腹背な“宦官(かんがん)集団”が長年に亘(わた)って構築した舞台の上で、予(あらかじ)め巧妙に振り付けられた役柄を、露(つゆ)知らず、演じているに過ぎません。彼らが起案する法案とて、例外ではありません。だから、相も変わらず行政組織の肥大化と行政予算の無駄遣いに歯止めが掛からず、日本は混迷の極みを漂流中なのです。
 それが、元大蔵官僚の畏兄(いけい)・野口悠紀雄氏が看破した官僚統治の「1940年体制」です。而(しか)して政治家・小沢一郎が終始一貫、唱えてきた「日本一新」とは、斯くの如き「官治」を「政治」へと改めねば日本に希望の未来は訪れず、との厳然たる公理に他なりません。
 手前味噌ではありますが、山国に於(お)ける都合6年間の知事在任中に全国47都道府県で唯一、起債残高(借金)を連続減少させ、プライマリーバランス(基礎的財政収支)も7年度連続で黒字化できたのは、有為な中堅・若手職員を見出すべく、従来型発想で計上された予算の積上書(つみあげしょ)を1枚1枚、深夜まで捲(めく)りながら議論しゼロベースで組み直したからであり、天下りと補助金の伏魔殿と化していた外郭団体の96%に及ぶ廃止・統合・縮小を敢行し得たのも、ヤマト運輸中興の祖、小倉昌男氏を起用したからです。
 が、人事と予算と法案を、選挙で有権者が選んだ人物の決断に委ねる事を、「官治」の周囲に集う「政官財学報の既得権益ペンタゴン」は潔しとしません。政界・官界・財界・御用学者の学界・記者クラブの報道の面々にとっては、現状維持こそが最大の目標。であればこそ、三百代言な言動を繰り返し、恰(あたか)も「改革」した振り程度の羊頭狗肉(くにく)に留めてくれた3代前の宰相は、ペンタゴンにとって極めて好都合な御仁だったのです。
 「『ガダルカナル』化する特捜捜査 『大本営発表』に惑わされてはならない」と元特捜検事の畏友・郷原信郎氏が慨嘆するにも拘らず、“オザワン”辞任は不可避、と唱和する面々が新聞・TVの大文字メディアで跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しています。それこそは、既得権益を死守するべくなり振り構わぬ自由民主党の思う壺。何故なら、小沢一郎・鳩山由起夫コンビが民主党の“アイコン”たればこそ、旧来的イデオロギーとは無縁の健全なる保守層が全国津々浦々で、市民運動政党から脱皮した民主党を主体とする政権交代に安心して信託可能と認識するに至ったのですから。
 利権ならぬ理念で集う民主党という集団を纏め上げてきたマネジメント能力と、候補者選定に留まらぬキャスティング能力に秀でた代表、そして“女房役”の幹事長が退陣したなら、健全なる保守層は棄権を選択、若しくは現与党に1票の減点式決断を行う可能性大。加えて、参議院で民主党、並びに新党日本と統一会派結成を英断した亀井静香代表代行率いる国民新党も、苦渋の状況に陥ります。「1940年体制」を打破する上で、如何なる大局観に立つべきか、メディアも有権者も、正念場を迎えているのです。


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地方にも生息する「渡り」 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」3月16日号】

「公務員改革」の対象にはむろん、地方公務員も含まれるはずです。にもかかわらず、各自治体の責任の下に実施されるべき、などと奇妙な「地方分権論」が横行し、中央から地方への無責任な“丸投げ”状態。これでは、地縁・血縁の「しがらみ」が充満する自治体が、自浄作用を発揮するわけもありません。
 現実問題、国家公務員行政職の平均年間給与が635万6千円であるのに対し、地方公務員行政職は651万5千円。共に、時間外勤務手当等を除いた金額です。 “お手盛り労働貴族”とやゆされるのもむべなるかな。が、この程度で驚いちゃあ、甘い甘い。地方公務員の退職金を「満額」支払い続ける為に、退職手当債なるモラルハザードな起債制度が、3年前に創設されました。
 2008年度の退職手当債は都道府県・市区町村で総計6303億円。07年度の5787億円よりも増加。今後10年間、毎年6000億円台の退職手当債が起債され続ける予定です。返済義務を負うのは地域住民の方々。他方、厚生労働省の発表資料では、勤続20年の民間企業大卒社員の退職金は減少しているのです。ほかの野党はなぜか、「地方公務員天国」の“改革”に及び腰。
 こうした中、「脱しがらみ・脱なれあい」を掲げる新党日本は3月5日の参議院予算委員会で、もう一つの知られざる「渡り」の存在を明らかにしました。 
 通常、「渡り」とは中央省庁の“キャリア”官僚が、“渡り鳥”のごとく天下り先を転々とし、多額の退職金をゲットする“ぬれ手に粟(あわ)”状態を意味します。地方公務員における“渡り鳥”は、現役職員の中に生息しているのです。しかも、極めて不透明な形で。
 例えば、課長補佐に昇格したわけでもないのに、課長補佐級なる肩書きが付与され、課長補佐と同等の昇給が保障される。これが地方自治体に温存されている「渡り」なのです。課長補佐級以上が地方公務員の60%を占める、摩訶(まか)不思議な構図の「からくり」です。取り立てて仕事もないのに、肩書きと手当は一人前以上にもうけものな「名ばかり管理職」。労災・過労死や残業代不払い訴訟が続出した日本マクドナルドの名ばかり管理職の逆バージョンと言えましょう。
 もう一つの謎は、給料の「調整額」。職務の「複雑さ・困難さ」を考慮、との大義名分の下、自治体病院の薬剤師や養護学校の教諭、更には行政職にも複数存在する代物です。特殊勤務手当とは異なり、その金額が退職金やボーナスにも反映されます。地公労と称する地方公務員労働組合の既得権益なのです。
 山国での知事時代、計70時間以上にわたって団体交渉に自ら臨み、不透明な「渡り」を廃止し、ニャンと99区分も存在した「調整額」も40区分を廃し、残りも退職金やボーナスには反映されない手当へと組み替えました。かくて、「公共事業の利権だけでなく、地方公務員の利権も排除するとは、ムラ社会のおきて破り」と退場を命ぜられたのかも知れません(苦笑)。
 が、驚くなかれ、「渡り」と「調整額」を廃止したのはいまだに、片山善博氏が知事を務めた鳥取県と長野県の2県のみ。全自治体の実態調査を早急に、とただしたのに対し、鳩山邦夫総務大臣も前向きな答弁。調査結果の公表が待たれます。


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ベーシック・インカム構想 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」2月16日号】

 「景気対策=財政出動」の短絡的な固定観念から脱却(パラダイム・チェンジ)せねば、混迷する日本にダイナミズム(躍動感)を取り戻せません。
 2兆円を定額給付金に投ずるよりも、1校平均6千万円で実現可能な耐震構造化を、国公私立合わせて全国に3万4千校存在する小中学校で即時完全実施した方が、はるかに安心・安全と地域雇用、更には内需拡大の“一石三鳥”。こうした具体的なパラダイム・チェンジを、他の与野党に先駆けて提唱したのは昨年の秋口。その新党日本は、次期総選挙のマニフェスト「新しい日本宣言。」に「ベーシック・インカム」導入を明記します。
 ヨーロッパで生まれたベーシック・インカム構想は、ゲッツ・W・ヴェルナーによれば、「生活に最低限必要な所得を全ての個人に無条件で支給」し、「『万人の真の自由』と生存権を保証」するシステム。働いている人も働いていない人も、おばあちゃんも赤ちゃんも、体の不自由な人もそうでない人にも均等に支給し、自分の判断で自由に使っていただく所得保障−。
 おいおい、それこそは究極のバラマキじゃないか、と早とちりされる向きも現れましょう。いえいえ、これこそは大きな政府の対極に位置する、すなわち、行政組織と労働組合のスリム化を同時に達成し、個人に立脚した中福祉・低負担の社会を実現し得る画期的方策なのです。
 仮に、ベーシック・インカム1人当たり年間60万円(月額5万円)を支給し、所得税率一律30%とする政策を導入するとしましょう。
 所得が200万円の4人家族の場合、ベーシック・インカムは60万円×4=240万で、所得税は200×0.3=60万円。すなわち、240万円(ベーシック・インカム)+200万円(所得)−60万(所得税)=380万円が可処分所得。同様に、所得が1000万円の2人家族なら、120万+1000万円−300万円=820万円が自由に使えることになります。
 景気対策の名の下に旧態依然な財政出動を行えば、特定の団体や業界が霞が関に頭を下げる手合いの予算が増え、役所の権限と天下り先が増大するだけ。終身雇用と専業主婦が主流だった時代の発想から脱却せねば、労働も家族も多様化している現状に対応し切れません。
 政府が生存権を保証するベーシック・インカムの導入は、多分に裁量行政だった社会保障制度(年金や生活保護、失業保険)にかかわる社会保険庁や自治体の福祉事務所の廃止を実現します。効率的な小さな政府と行政の出現で、「脱・福祉切り捨て」、「脱・行政の肥大化」が同時に達成できます。すなわち、意味なき組織と予算のムダ分を、他の重点政策に振り向ける選択も生まれます。さらには、麻生政権の支持率とくしくも同じ加入率18%と低迷し、残り82%の勤労者の立場を代弁し得ぬ労働組合を、良い意味で溶解させる触媒にもなり得ます。
 新党日本は、社会的公正と経済的自由を同時に目指す立場。セーフティーネット、景気対策、小さい政府の“一石三鳥”を実現するベーシック・インカムこそ、超少子・超高齢社会の日本にふさわしき、正しいハイエク・新しいケインズの哲学に基づく、個人を大切にする政治・経済システムだと考えます。


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ニッポン主導の海賊対策を 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」1月19日号】

 ソマリア沖での海賊被害対策として、政府、与党は海上自衛隊艦船の派遣検討を進めていますが、仮に海自を派遣するとして、どういう基準で対応するのかあいまいです。日本以外の他国船籍の船が被害に遭った場合は? あるいは日本人が1人だけ乗り組んでいたときは?
 それよりもまず、複雑なソマリア事情を的確に認識しなければ、根本的な問題解決につながりません。ソマリアは氏族対立が激化し、1991年以来、中央政府が存在しない無政府状態。他方で、インド洋からスエズ運河への回廊に面した地政学的に重要な「アフリカの角」として、米ソ両国が各氏族に資金援助を続けた歴史を有します。
 竹田いさみ獨協大学教授は、高速艇と衛星利用測位システム(GPS)、自動小銃を駆使して、数百キロも沖合の海上でタンカーや貨物船を襲撃し、昨年1年間で総額110億円もの身代金を獲得した集団が、内戦で仕事を失った「漁民」の筈が無い、と看破しています。
 即ち「海賊」問題とは、アフガニスタン、パキスタンからアラビア半島、アフリカ大陸を経て、欧米へと至る麻薬と武器の密輸ルートの中継地点として、無政府状態のソマリアが存在する中で、国際犯罪プロ集団が暗躍する構図なのです。
 国家対国家の軍隊の戦いなら、いつかは終戦します。けれども、アフガンでもソマリアでも、闘いの相手は「有為転変」「変幻自在」な無法グループ。その数と形はインフルエンザウィルスのごとく、年々拡大、変容し続けます。とするならば、テロとの戦いとは、軍事鎮圧でなく、治安維持の警察的使命で、当該地域の富の偏在を変えるしかないのです。
 既に新党日本は、憲法9条1項と2項を堅持した上で、「地震・津波等の天変地異、内戦や飢餓等に直面する地域での救助活動や医療支援、住宅再建へ駆け付ける、富国強兵とは対極の『国際救助隊』を創設し、3項に明記すべき」とマニフェストで提唱しています。昔の人気TV番組「サンダーバード」の21世紀バージョンです。
 世界第2位の国連分担金を支払い続ける日本の警察・消防は、高く評価されています。その日本は、国連が無政府状態のソマリアを暫定統治し、治安回復を図る決議と、軍隊ならぬ警察・消防の治安維持組織を創設し、機能させることを具体的に提案すべきです。先に女性医師が無事解放された国際救援団体「世界の医療団」、アフガニスタンで男性技師が犠牲となった「ペシャワール会」のような活動を全世界的に展開してこそ、日本の面目躍如ではありませんか。
 国際社会でのフランスの復権を唱えるニコラ・サルコジ大統領は、イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ侵攻問題で、イスラエル建国に関与した米英両国の動きが鈍い中、停戦に向けて欧州連合(EU)として主導権を握ろうと、迅速な行動と手腕を発揮しました。
 日本のモノ作り産業の強みは、“オンリーワン・ファーストワン”。外交音痴な日本の汚名返上を期して、外相経験者の宰相麻生太郎も、ソマリア沖の海賊対策を契機に新しい国際貢献のスキーム(枠組み)を提示すべきです。他国と同じでは、いつまで経っても、日本は尊敬も感謝も受けられません。


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偽証認知奨励する国籍法改正 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」12月22日号】

 至らなさを改むるにしくはなし。転ばぬ先のつえ。法治国家における政治と行政は、その気概を忘れてはなりません。にもかかわらず、今回の国籍法の改正騒動で露呈したのは、与野党を問わず既存政党が55年体制下の"国体政治"から脱却し得ていないという驚嘆すべき事実でした。
 他方で、新聞もテレビも参院での採決に至るまで、その中身も問題点も報じようとしなかった「国籍法の一部を改正する法律案」をめぐって、DNA鑑定制度の導入と父親の扶養義務の明記を求める"草の根ムーブメント"が燎原(りょうげん)の火のごとく、ウルトラ無党派層に広がった事実こそ、既存政党も既存メディアも挙々服膺(ふくよう)すべきと感じました。
 この問題は右も左も関係ありません。イデオロギーを超えた、人間の問題、日本の問題なのです。故に新党日本代表として私は12月5日の参院本会議で反対票を投じました。
 "身勝手な行為"で外国籍女性との間に子をもうけた日本人男性が、婚姻も同居もしないが日本国籍だけは子どもに付与せよ、と法務局の窓口に出向いた場合、写真を添付の書類さえ整っていれば、「届け出制」で受理する。それが今回の「改正」です。しかも扶養義務の宣誓すら課せられていないのです。
 今や、誰もが容易に写真を編集可能なデジタル時代です。偽装認知の横行を防ぐ上でも、DNA(ヒト固体のデオキシリボ核酸の塩基配列)鑑定を条文化すべきなのです。既にイギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギーなどのヨーロッパ11カ国では、国が指定する医療機関でのDNA鑑定を義務付けています。
 が、驚くなかれ、11月27日の法務委員会で質疑に立った私に対し、森英介法相は以下の答弁を行いました。DNA鑑定は人権侵害の差別につながる、と。ならば、いかなる根拠に基づいて、日本政府は「拉致」関係者に対するDNA鑑定を実施したのでしょう?
 とまれ、DNA鑑定制度の導入と父親の扶養義務を明記せぬ今回の改正は、さらなる「闇の子供たち」を生み出す「偽装認知奨励法」「人身売買促進法」「小児性愛黙認法」「人権侵害法」に他ならないのです。
 その筋の関係者がアジアの少女を連れて来て、見ず知らずのフリーターの青年に金銭と引き換えに「認知」させる。が、「商品」としての価値がなくなるや、彼に押し付ける。されど、扶養能力もない青年は途方に暮れ、結局は日本国籍の少女を日本政府が生活支援する状況に陥る。蛇の道は蛇。単なる笑い話では済まされないと憂慮します。今回の国籍法改正で年間700人もの未成年者が新たに日本国籍を取得する、と法務省は文書回答しています。
 DNA鑑定と扶養義務を明文化する修正を求めて奔走した私を含む、国民新党と無所属の計9人が反対した「改正」案は、民主、自民、公明、共産、社民、改革クラブの220票で可決しました。とは言え、「おかしいことは一緒に変えていこう」と、広範な広がりを見せた今回のムーブメントは、バラク・オバマ次期米大統領を誕生させた、ネット社会における新しい草の根運動と似通っています。

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許すまじ時価会計凍結 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」11月10日号】

 空威張りな“上から目線”宰相率いる日本政府は、金融機関や企業が保有する株式などの金融商品を市場の取引価格で評価する「時価会計」の凍結へと流れています。欧米諸国が凍結したから、長い物に巻かれる日本も右に倣って、という奇っ怪な方便です。
 今や満身創痍(そうい)な欧米諸国から一目を置かれる日本であればこそ、社会的公正と経済的自由を同時に達成し、ダイナミズム(躍動感)を取り戻すべく、フェア(公正)でオープン(自由)でロジカル(理)に叶った時価会計を、朝令暮改してはならぬのです。
 分りやすい事例を挙げれば、1億円で購入したマンションの価値が4000万円まで急落したなら、それを担保に融資を受ける際の基準も当然、1億円ならぬ4000万円。一般人には「時価会計」が適用されているのに、金融機関と企業はなぜ例外扱いしたいのでしょう?
 時価会計の適用で?裸?をさらすことになれば、経営破綻する企業が続出するから? 当該企業のトップが経営責任を問われる羽目に陥るから? が、そんな内輪の論理がまかり通るなら、ハイエクもケインズも草葉の陰で、甘チャン過ぎるぞ、と一喝するでしょう。
 1999年には巨額の公的資金が日本のメガバンクへと流れ込み、その後も総じて法人税を免除される一方で、経営陣は高額報酬の恩恵に浴してきました。他方で全国各地で地域ピラミッドの頂点に君臨する地方銀行も、地元企業と株式持ち合いの“なあなあ関係”を保持しています。即ち、時価会計の凍結とは、中央・地方を問わず、問題先送りを望む“ムラ社会”の願望にすぎません。
 なるほど、時価会計の保持は一時的に、金融機関や企業の業績悪化を露呈するかも知れません。が、怯(ひる)まず・屈せず・逃げずの気概を抱いて、フェアでオープンでロジカルな時価会計の維持こそが、疲弊する地域の元凶たる地銀・農協に象徴される地元金融機関が牛耳る“しがらみ・なれあい”ピラミッドの溶解へとつながり、ひいては社会的公正と経済的自由を併せ持った地域活力の再興をもたらすのです。
 つまりは、弱肉強食・優勝劣敗の“なあんちゃって小泉・竹中へなちょこ改革”と対極に位置する、まっとうな力強さを日本に取り戻す、切磋琢磨(せっさたくま)の共利共生社会への第一歩なのです。底なし泥沼化した「新銀行東京」と、自給率向上の農業振興ならぬ“トレーダー稼業”にいそしむ「農林中金」の2行のみを“狙い撃ち”する民主党も、「時価会計」の原則を主張してこそ、不純な「政局」ならぬ公正な「政策」で勝負する野党第1党としての評価を、「日本経済新聞」を購読するウルトラ無党派層から勝ち取れるのにね、いやはや。
 どうやら、優柔不断さも前政権から引き継いだらしき現政権が、「解散」に関しても問題先送りを決め込むのに対し、民主党は「徹底審議」の4文字熟語を持ち出し始めました。が、「徹底=抵抗」の日本社会党的古色蒼然(そうぜん)たる負のイメージが漂う現実に、少し無自覚に思えます。「解散でなく景気」と粋がる宰相に、切磋琢磨の望ましいハイエクと経世済民の新しいケインズの融合を目指す、“まっとうな構造改革”論争で、具体的に挑むべきです。


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ケインズの至言 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」10月13日号】

「所信表明」ならぬ「所信“挑発”演説」ではないかと9月29日、第92代内閣総理大臣の心智に呆れた向きも少なくなかったでしょう。ですが若しや、これは総選挙に対する、ウルトラ無党派層の関心を敢えて減退させる高等戦術では、と私は捉えたのです。
 投げ出し2代に続いて今回も、この程度の人物が一国の首相かよ、と脱力感を味わった、特定の支持政党を有さぬ人々は、この日本を変えなくちゃ、とは思いながらも然りとて、地元の野党候補は労働組合の、或いは政経塾の臭いが鼻に付くからなぁ、と投票所に足を運ぶ手間暇を煩い、蓋を開けてみたら、弱体化した筈の組織票を何とか纏め上げた連立与党が低投票率に助けられて逃げ切る辛勝作戦では、と。
 生半可な覚悟では「政権奪取」は実現し得ぬ、と僕は痛感しています。縦しんば各種世論調査で「政権交代」を期待する割合が過半を占めていようとも。而して、経済学者ジョン・メイナード・ケインズの至言、「投機とは美人コンテストの優勝者を当てるゲーム投票みたいな代物」を拳々服膺すべきなのです。
 とあるタブロイド紙が往時のイギリスで、「美人」100名の顔写真を掲載し、6名連記の投票で上位入賞者を的中させた読者には多額の賞金を与える企画を実施し、部数を急増させました。
 無論、自分の恋人や結婚相手を見出すのとは異なります。すると、如何なる投票心理が人々の間に生起したか? 個人的な美的嗜好ではなく、他の不特定多数の参加者が下すであろう平均的な見方を予測した上での投票行動に出たのです。
「政権交代」に関する世論調査にも、同様の深層心理が働いてはいまいか? 私のみならず、敬愛する小沢一郎氏も、同様の懸念を抱いているかも知れません。
 他方でケインズは、以下の見解も述べているのです。崇高なる社会的使命を抱いて経営者が事業に邁進している企業に対しては、利益を追求する投資家である前に1人の人間として私も賛同の意を表明すべく、ある種の情熱を抱いて資金投下するであろう、と。
 肉体的にも精神的にも、更には日本の未来にとっても、今回の総選挙は最後の挑戦である、と繰り返し述べている小沢一郎氏が、その科白のみに留まらず、この政治家は文字通り命を賭して総選挙に臨んでいるのだ、と全国津々浦々の有権者をして実感させ得るだけの熱風を舞い上がらせた時、今や“お馬鹿オヤジ”として朽ち果てた小泉純一郎氏が立案実行した偽装熱風選挙とは対極に位置する「日本の選択」が実現するでしょう。
 とまれ、参議院で民主党と統一会派を組む新党日本代表の私は10月3日、30分間に亘って代表質問に立つ機会を得ました。社会的公正と経済的自由を同時に達成し、混迷する日本にダイナミズムを取り戻すべく、供給側の都合から消費側の希望に根ざした仕組へと、世の中の有り様を抜本的に再構築せねば、との認識に基づき、宰相麻生太郎のみならず中川昭一、石破茂、野田聖子、斉藤鉄夫の各大臣に質問を行いました。
 新党日本のホームページでは、その全文と答弁を含む映像が御覧頂けます。“上から目線のオレ様内閣”が、「とてつもない日本」どころか「とんでもない日本」へと迷走を続ける中、「信じられる日本」を構築すべく、引き続き、奮迅します。


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景気と解散の連立方程式 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」8月25日号】

 福田改造内閣が発足しました。私の印象は「仕事師内閣」。改造による浮揚効果が劇的でなかったとはいえ、実績を日増しに認めざるを得ない手ごわい存在になっていく予感がします。
 郵政民営化反対・復党組の保利耕輔、野田聖子両氏の起用を、マスコミは「改革後退」と騒いでいますが、保利氏は自民党総合農政調査会長の経験者。郵政票だけでなく、昨年の参院選では民主党に投票した農山漁村の自民党支持層の回帰に向け、効果を発揮するのでは。消費税率引き上げの問題でも、福田康夫首相、伊吹文明財務相がそろって「2、3年のレンジで考えたい」と軌道修正し、税率引き上げ反対を唱える民主党と、政府・自民党の「違い」が見えにくくなりました。
 内閣改造が終わるや、景気は既に昨年暮れから後退が始まっていた可能性もあると今ごろになって言い放ち、衆院解散・総選挙を意識した2兆―3兆円規模の経済対策づくりに全力を挙げねば、と古賀誠選対委員長が宣言する始末です。
 無論、その規模は流動的にせよ、8月末までに具体化する「安心実現のための総合対策」は果たして、世界にも類を見ない速度で超少子・超高齢社会が深刻化するニッポンに、希望の未来をもたらすのでしょうか?
 残念ながら、漏れ伝わってくる内容の多くは目先のことばかり。公明党が主張する定額減税も支持者向けの“対症療法”にすぎません。40年後には現在の3分の2まで人口が減少する日本。では、少なくとも10年後の日本はどうあるべきか、“原因療法”とも呼ぶべき視点に立った「量の拡大から質の充実」を図る哲学が皆無なのです。
 09年度の概算要求基準に重点化枠が設けられてはいますが、わずか3000億円。これでは、質の高い新エネルギー開発なんて望める訳もありません。
 山国での知事時代に全国で唯一、公共事業にとどまらず備品購入などを含む、あらゆる分野で公明正大な一般競争入札を導入した結果、従来比2割のコストをカット。6年連続で借金を減少させ、7年度連続でプライマリーバランスを黒字化すると同時に、そこで生まれた入札「差金」を原資に、30人学級を小学校全学年で実現しました。が、政府でも自治体でも、談合の温床である指名競争入札や随意契約が幅を利かせています。
 09年度の政策経費である一般歳出の上限は47兆8000億円。仮に入札改革で1割カットを実現すれば約5兆円がもたらされ、天下り官僚が名前を連ねるコンサルタント会社への無駄な委託も中止すれば、財政再建派も上げ潮派も真っ青な経世済民政策が実施可能です。
 一例を挙げれば、九段下駅は1日の乗降客が34万人。なのに、半蔵門、新宿両線から東西線への乗り換えは階段のみ。全国の駅でバリアフリー化を図るなら、地域密着型の公共事業で雇用を確保し、善男善女も大喜びな「目先の予算」でしょうに。
 とまれ「仕事師内閣」として実績を積み、「反省しろよ、自民党。だけど、やっぱり自民党」の“福田マジック”を仕掛けるとするなら、任期満了で来年10月総選挙も有り得る話です。が、周囲の見立てをひっくり返すのも“福田マジック”。すると、補正予算の是非を問う今年10月解散も十二分に有り得る?


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堂々と公共事業Uターンを 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」7月28日号】

 1度決めたら覆さないのが行政の性。完遂しないと今までの投資が無駄になる、と「へ理屈」を述べ、当初予算を何倍も上回る補正予算を組んで、多くの納税者が首をかしげる巨大公共事業を続行するのです。が、至らなさは改ためるにしくはなし。発想を大本から変えるべきです。
 山国の知事に就任直後、レタスで知られる千曲川上流の川上村へ車座集会に出掛けると、バンジージャンプの飛び降り台かと見まがう程の、高さ70?を優に超える橋脚が2本、屹立(きつりつ)しています。あれは何と尋ねると、ふるさと農道をウルグアイ・ラウンド対策で建設中。上部の橋げたも発注済みなのだとか。県道も隣接しているのに何故?資料を求めると、19億円の当初予算が63億円に膨れ上がっていました。有り得ない、と僕が声を上げると老獪(ろうかい)な農政部長は「知事、小さく産んで大きく育てるのが公共事業の精神です」。
 環境と財政を破壊する国営諫早湾干拓事業は、漁業者、農業者にとって、百害あって一利なしです。至らなさは改ためるにしくはなし。佐賀地方裁判所の判決を好機として、排水門開門を決断すべきだったのです。
 「せっかく淡水化したのに、農業用水の確保はどうする!」と激高する向きもいます。が、今や水田面積は昭和30年代の半分。他方で明治29年から1度も見直されていないのが慣行水利権。入植者はわずか40戸。眠っている水利権を再活用し、干拓農地へと給水すれば「ノープロブレム」。悪名高きギロチンを開門すれば、赤潮も消滅し、ノリも貝も生き返ります。なのに、山国出身の若林正俊農相は控訴を発表。事業の当初計画では壮大な水田確保、それがいつの間にか水源確保と畑づくりに、最後は防災が主目的に、と朝令暮改。早い話が、農業土木事業を存続したい一心なのです。
 この迷走って、大戦末期の戦艦大和の悲劇と似ています。帰路の燃料確保もままならぬ状況下で出航しても、戦況を一発逆転し得るはずもなく、若き尊い命を失うだけと、誰もが気付いていたにもかかわらず、大和はUターン出来ませんでした。
 話変わって、国土交通省中部地方整備局は過日、天竜川水系の三峰川における戸草ダム建設を中止する方針を公表しました。直轄事業と呼ばれる国の公共事業でも、治水・利水の見返りとして自治体には費用負担が生じます。戸草ダムの場合でも長野県は総事業費1000億円の1割以上を、「直轄負担金」として求められていました。けれども「『脱ダム』宣言」に基づき、再試算、発電、工業用水の2事業共に採算割れ必至と判明し撤退を表明したのが今から7年前。長野県からの直轄負担金がゼロとなり、これがきっかけで今回、着手後の大型公共事業としては初めて、国交省も建設断念に踏み切ったのです。
 直轄負担金を“人質”に取れば、主導権が地方に移る「地方主権」の好例です。ダム建設予定地周辺の用地買収などで既に1000億円を投じていましたが、これこそは、行政や政治の在り方を変える、少々高めの「月謝」。国に盾ついたら、ほかの補助金を削減したり、新規事業の個所付けを認めてくれないよぉ。意気地のない首長や議員がまずは覚悟を決めないと、大半の自治体において、地方主権は夢のままではありますが…。


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脱「上げ潮VS財政再建」を! 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」6月30日号】

 消費税の増税論議が世上をにぎわしています。しかし、消費税率が10%へ倍増すると民間消費は2.7%減、GDPは1.9%減と三菱総合研究所は発表しています。つまり、ゼロ成長どころかマイナス成長。しかも40年後の日本は、働く人も人口も現在の3分の2まで激減する超少子高齢社会。増税で消費が減退し、景気も失速。他方で懐具合が温まる中央・地方の官僚・役人だけは増長し、無駄遣い予算が横行する最悪な展開です。
 従前から新党日本は、予算の計上や執行の仕方、納税の方法を根本から変えねば世界一の借金国ニッポンに未来は訪れず、と主張してきました。
 まずは徹底した歳出改革が必要です。談合疑惑で福島、和歌山、宮崎3県知事の逮捕後に全国知事会は、予定価格1千万円超の契約は一般競争入札へと転換する指針を発表。が、1年半後の今でも全国で僅か16府県での導入にとどまっています。
 長野県知事時代、教育委員会を含むすべての入札に一般競争入札を採り入れました。同時に、各部署の落札価格が適正か、入札工事の仕上がりが粗雑ではないか、チェックすべく会計局に検査チームを設けたのです。軽井沢に移住した談合摘発で評価高き市民オンブズマンの弁護士を会計局長に外部登用。土木などの技術職員を彼の下に配属し、安かろう悪かろうの粗雑な事業はやり直しを業者に命ずることで、談合のみならずダンピング競争もなくなり、80%前後の適正な落札率となりました。
 次に不公平税制の是正です。税金は無論、収入を得る際の「入口」か、支出を行う時の「出口」で徴収するしかありません。けれども、サラリーマン10割、自営業者5割、農家3割、政治家1割という収入補足率を隠喩(いんゆ)する「トウゴウサンピン」といった符丁がいまだにささやかれる不公平な事態を改善もせずに増税だなんて、虫が良すぎます。
 加えて、全世界で唯一、インボイス(伝票)方式を導入しない日本の消費税は、看板を偽る羊頭狗肉(くにく)な代物。年間売上1千万円以下の事業者は、消費税分を顧客からちょうだいしているにもかかわらず、当該金額分の納税義務が免除される不公正な“益税=不労所得”に、いかなる思惑・配慮からか、日本共産党も言及しようとしません。
 第3に、給与所得者へも確定申告制度を導入すべきです。知らないうちに天引きされている源泉徴収ではなく、誰もがいったん、自分が得た収入の中から税金を支払う確定申告を行うことで、靴やスーツを経費として認めるのか否かの攻防が生まれ、ひいては「国の株主」たる納税者の意識も高まります。
 6年間の在任中、全国で唯一、起債(借金)残高を減少させ続け、プライマリーバランス(基礎的財政収支)も連続黒字化を達成し、入札改革で生まれた原資を元に、全国で最初に小学校30人規模学級を全県下・全学年で導入した僕からすれば、「財政再建」と称して増税をもくろむ面々も、M資金のごとき埋蔵金を喧伝(けんでん)する「上げ潮」の面々も、笑止千万です。
「財源」なる霞が関用語を用いて議論し始めた段階で既に、政治ならぬ官治を牛耳る老獪(ろうかい)なる官僚集団に、白旗を掲げているのです。予算と人事を掌握し得ぬ政権与党を信任し続けてきた奇っ怪ニッポンの悲劇です。


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自公よ、石原都知事よ 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」6月2日号】

 2003年に土壌汚染対策法が誕生し、調査で汚染が発見された場合、都道府県知事の判断で汚染物質の除去や健康被害の防止措置を取るよう定められました。ところが、法施行前に使用を止めた施設にかかわる土地には、この法律は適用されません。その狭間で生じたのが、「築地市場移転問題」なのです。
 狭くて古くて危ない、と現在の東京都中央卸売市場を都知事は一喝し、豊洲地区への移転を強行しようとしています。しかも、その予定地は土地所有者だった東京ガスとの間で01年に売買契約されている為、現行の法律は適用外。
 が、過去32年間も、石炭を原料として都市ガスを製造していた場所ですから、ありとあらゆる有害物質が土壌に蓄積されています。01年時点での調査でも、水俣病の悲劇を生んだ水銀が環境基準値を24倍も上回って検出され、ヒ素も49倍、青酸カリの一種であるシアンは490倍。最近の調査では発がん性物資のベンゼンが4万3千倍にも達しています。
 地下2m分の土砂を入れ替え、表面も舗装するから大丈夫、と東京都庁は“広言”しますが、水銀やベンゼンは気化物質。夏にはアスファルトの隙間から地上へと蒸発してきます。埋立地ですから、地下水も高濃度に汚染されています。
 築地市場で扱う魚介類は、値段の張る銀座の寿司屋向けに留まりません。都内のスーパーマーケットや商店街の魚屋さんの50%以上は、築地市場経由なのです。食卓への影響は甚大です。
「おかしいことは、おかしいと言う。」新党日本は昨年来、築地市場移転問題は食生活の安心・安全を脅かす大問題だ、と市場で働く仲卸業者の方々と共に、警告を発し続けてきました。
 こうした中、同じ危機感を共有する民主党と共に議員立法で提出したのが、5月23日に参議院で可決した土壌汚染対策法の一部を改正する法案です。学校、公園、卸売市場等の公共施設を計画する際、これまで適用外だった土地に関しても再調査を義務付け、土壌汚染地での建設に歯止めを掛ける内容です。
 が、信じられない事に自民、公明の与党は、反対票を投じました。改正案は衆議院へと送付されましたが、ここでも与党は無視を決め込むでしょう。その理由が呆れます。じっくりと時間を掛けて環境省が法改正すべきだ、と言い張るのです。立法府の自己否定ではありませんか。生命に関わる問題に鈍感すぎます。
 移転後に築地を再開発すれば、1兆円を超える売却益が国庫ならぬ都庫を潤す、と一部で囁かれる便法は、消費者不在の為政者側の願望に他なりません。供給側の都合ではなく、消費側の希望に根ざした政治へと改めねばなりません。
 健康的な日本食が注目される今、ツキジは海外から多くの人々が訪れる“聖地”。レンガ建てのフィッシャーマンズワーフへと現在地で再整備してこそ、ビジット・ジャパンを推進すべく観光庁を創設する私たちの日本に相応しき選択です。
「海を愛する男は、恩を仇で返すなぁ」。市場関係者の方々と共に昨秋、昼休み時間の新橋・銀座をデモ行進した際、マイクを握った僕が語った惹句(じゃっく)です。諌早湾干拓を始めとして、一旦、計画されるとUターンしないのが行政や政治。
 その意味でも今回の法案は、「国会が法律改正しちまったから、移転断念するしかねえんだよ」と新銀行東京問題でも満身創痍(そうい)な石原慎太郎氏に“大義名分”を与える、彼の処女作に相応しき太陽政策的エールなのです。

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先手必勝の先例を 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」4月28日号】

 揮発油税等の暫定税率が失効し、ガソリン1リットル当たり25円「減税」が4月1日から実現しました。その後、参議院では16日の本会議で、道路特定財源を10年間維持する道路整備費財源特例法改正案の趣旨説明が行われ、財政金融委員会に付託、審議する運びとなりました。
 自民、公明の両党は、衆議院では国土交通委員会で審議したのに、民主党が委員長を握る財金委での審議は恣意的だと騒いでいます。が、前例踏襲のオツムでは解決不能なのが、参院で与野党逆転した現在の政治。財政に関わる法案なのですから財金委で話し合う新たなルールを設定したまで。江田五月参院議長も、民主的ルールの多数決で議院運営委員会が付託先を決定した話、と取り合いませんでした。
 寧ろ問題なのは、以下の恣意的「対策」です。暫定税率問題を巡って政府与党は、ガソリンスタンドの経営悪化に対応すべく、数十億円の税金を全国石油協会に投入して基金を創設し、特別利子補給制度を開始すると述べているのです。
 ちょっと、待ってください。今回の25円は「減税」分。元々、税金として国庫に納付されていた25円です。石油会社や販売会社の利益が削られた訳ではありません。なのに、どうして、数十億円もの税金を全国石油協会に投入するのでしょう?
繰り返しますが、今回の減税で利益が減少した訳ではないのです。仮に経営難のガソリンスタンドが有れば、全国8ヶ所に位置する経済産業省の経済産業局と各都道府県の商工部門が連携して、経営改善の指導・支援を行うのが筋です。
 おっと、謎が解けてきました。全国石油協会は長年、自民党に多額の献金を行ってきた団体だったのです。夜陰に乗じて、税金から“キックバック”を画策しているのかも知れません。
 供給側の都合ではなく、消費側の希望に根ざして、より良き社会を実現していくのが、政治です。であればこそ、野党は今回、不透明・不特定財源として遊行費にも“流用”していた、羊頭狗肉な道路特定財源の暫定税率分を減税し、25円を消費者に還元したのです。
 公共交通機関が衰退している地域に暮らす世帯にとって、ガソリン代が家計に占める割合は、都会とは比較にならぬ程に高いのです。一家に1台ならぬ1人1台の自動車通勤だからです。
 今回の減税で、家族で食事に出掛ける余裕も生まれました。春の新作ブラウスが欲しいわ、と愛する妻にせがまれても笑顔で応える余裕も少し生まれました。何れの出費も、地域経済が元気を確実に取り戻す効果を創出します。
中央搾取の利権政治から地域還元の福祉政治へと大転換する切っ掛けが、今回の25円減税なのです。にも拘らず、行政の無駄も省かぬ儘、「何も決められない政治の責任は野党にある」と自民党の大島理森国対委員長は、天に唾する発言を繰り返しています。
それは福田康夫首相も同様です。「何時まで下げているんですか?」と明後日ならぬ一昨日の方角に向かって愚痴り、「物価は上がるものなんです」と聴衆の前で大言壮語する迷走振りです。更に大島氏は、「参院の意思を早く示せ」と挑発も行う始末です。
暫定税率復活に反対する世論は明白。ならば、与党が再議決をする前に、参院で野党が法案を否決する“先手必勝”を敢行してこそ、国民の意思を反映する参院の面目躍如というものではないでしょうか。これまた、新しい先例の誕生です。


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いまだOS転換できぬ与党 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」3月31日号】

 この原稿がお手元に届くのは3月31日。揮発油税の暫定税率に関して、何らかの結論が出され、私の考えとは異なる“着地点”に不時着しているかもしれません。が、実業の世界に携わる経済界のビジネスリーダーも数多く定期購読する「日経ビジネス」3月3日号に掲載の読者世論調査では76%もの人々が、「道路特定財源の使途に対するチェックが不十分で無駄が多い」と廃止を望んでいます。
 民意は明らか。にもかかわらず、政府・与党にとどまらず、全国知事会も「安値のガソリンスタンドに人が殺到しパニックになる」と、“そのまんま自民党”“そのまんま国交省”な発言を繰り返しているのです。現職知事だった時分に議論となっていたなら、私だけは廃止を主張していたでしょうに、いやはや。
 実は、パニックなど起こりようもないのです。新党日本が参院で統一会派を組む民主党は2月末に「道路特定財源制度改革関連3法案」を提出しています。3月末に期限切れとなる揮発油税の暫定税率以外の“日切れ税率”継続を認める法案です。オフショア市場の利子非課税措置をはじめ経済に影響を与える税率を継続させ、道路特定財源問題と切り離したのです。
 加えて3月21日には「ガソリンスタンド対策法案」も提出しました。揮発油税は製油所の出荷時に課税されます。3月末までに全国のスタンドに納品された分は暫定税率の課税対象。4月1日の午前0時以降に販売する場合も論理上、暫定税率を上乗せした価格で購入してもらうことになります。そこで、現場での混乱を防ぐべく、暫定税率分なしの価格で販売可能とし、税額の差額をスタンドの還付する内容です。供給側の都合ではなく、消費者と現場で働く者の視点に立っての思いやりです。
 ボールは福田康夫首相側に投げられているのです。31日の23時59分までに「対策法案」を衆参両院で可決するだけで、混乱は防げるのです。
 暫定税率が切れると地方自治体の税収が激減し、歳入不足の激震に見舞われる、と恐怖をあおる発言を繰り返す政府高官こそ、おおかみ少年です。“なあんちゃって小泉・竹中へなちょこ改革”で強行された「三位一体の改革」なる羊頭狗肉(くにく)な施策を振り返れば、今回の暫定税率はノー・プロブレムと得心していただけるでしょう。
 「構造改革」の美名とは裏腹に、わずか5年間で250兆円も借金を増大させた小泉内閣は、地方交付税を毎年9500億円も削減していったのです。とりわけ2003年度の地方交付税は、02年度よりも1兆5000億円近くも激減。しかも、総務省と財務省から各自治体に通達されたのは、当初予算の審議を行う2月議会直前の1月末でした。福祉・医療・教育・農業・商業とすべての領域に影響を与える大パニックです。なのに、“小泉マジック”に酔いしれていた大半の首長や議員は「この詐欺師め」と拳を振り上げるどころか、倒錯したSMの世界のごとく交付税額を組み替えた予算案を提出、可決したのです。
 今回の地方減収分は往時よりも少ない金額の9000億円。しかも、影響は道路に限定されています。暫定税率を死守せねばと、息巻く政府・与党と自治体長は、国破れて道残る日本を目指しているのでしょうか?

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隠ぺい、冤罪、閣僚失格 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」3月3日号】

 海上自衛隊のイージス艦衝突事故で、石破茂防衛相が自分のところへ連絡が入るまでに1時間半もかかったことについて「なぜこんなにかかったのか」などと、まるで人ごとのような発言をしていますが、石破氏は民間に例えれば社長の立場。社員が不祥事を起こしたり、組織として上げるべき情報を上げてこなかったりしたら、それはすべてトップの責任なのです。
 防衛相就任からすでに6カ月がたち、かつて防衛庁時代も長官を務めたこともある。もっと言えば、自由民主党は50年以上も政権を運営する中で、何らリーダーシップを発揮してこなかった。海上幕僚長の更迭で済まされる話ではないはずです。
 社会保険庁による年金記録の不備問題も根本は同じ。職員がちゃんと働かなかったり、不祥事や失態を隠したりしてきた原因は、それを政府、与党が許してきたからにほかなりません。
 緊急・重大事案が発生時には、第1報が陸海空幕僚長から防衛相に直接入るように通達を出したと言いますが、もはやそんな次元の話ではありません。第3管区海上保安本部への事故連絡も発生から約20分が経過してから。隠ぺい体質と批判されても仕方がないでしょう。
 それ以前に、大中小の船舶が行き交う東京湾で、夜明け前に自動操舵(そうだ)だった。手動操舵というマニュアルすら策定してなかった。これだけで論外。しかも艦長はようとして姿を現さず。キャプテンとして失格。海の男の風上にも置けません。
 一流といわれる料理店では、責任者が還暦を過ぎても現場に立ち、盛り付けにはじまり、料理とは何か、接客とは、サービス業とはどうあるべきかを店の人間に厳しく指導するからこそ、そこで働く人間も育つわけです。「人さまに喜んでいただいてナンボ」と、嗅覚(きゅうかく)という勘所を養成しているわけです。
 鳩山邦夫法相が鹿児島の選挙違反事件の無罪について「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」と発言したのも言語道断。
 冤罪の被害に遭った中山信一さんらとは何度も会って話を聞いていますが、中山さんは金も酒も配っていない。それどころか、わずか20所帯のその集落で会合すら開いていない。冤罪以上にタチの悪い捜査権力によるでっち上げです。捜査の過程で、親族の名前を書いて踏ませる「踏み字」で自白を強要さえしている。検察に、そんな捜査をやるべきではないと言うならいざしらず…。鳩山法相は、きちんと取り調べの際の音声や様子を任意聴取の段階から全て記録する?可視化?を早急に図るべきです。
 国会に石破防衛相の問責決議案を出そうという動きがありますが、鳩山法相の責任についても追及していくべきでしょう。「友人の友人がアルカイダ」といった“前科”も多いのですから。
 政治家は「冷酷さ」と「冷徹さ」の違いを認識すべきです。政治家は有権者や暮らしている人のためには、冷徹でなければいけません。小沢一郎代表以外の大半の野党幹部は、自民党との大連立には反対を表明していたはず。政府、与党に何の遠慮が要るでしょう。“永田町ムラ”の甘チャン政治では、まっとうに働き暮らす人々は蚊帳の外に留め置かれたままです。


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求められるのは発想の転換 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」2月4日号】

 34年間も「暫定」を放置し続けた上に、さらに今後10年間は「暫定」を堅持し続けねば、と自らの発言に疑問も抱かずに唱和する皆さまのオツムの中を、CTやMRIで検査してみたいですね。そんなに必要不可欠な税金なら、政府与党は「恒久」税率として今国会に提出すべきでしょ。安全保障は恒久法を制定せねば、と施政方針演説で語ってるんですから。
 にもかかわらず「暫定」なのは、当の本人たちも後ろめたいんでしょうね。与党が3分の2を占める衆院で再議に掛けてでも、などと数の論理を持ち出す。でも、各種世論調査では国民の3分の2以上が廃止を望んでいる。国会と国民の間で「3分の2」に関して、明らかに乖離(かいり)が生じてるんですね。
 だから、特定の支持政党がない、と答える国民が5割を超えているんです。「真に必要な道路」と情緒的な言葉が繰り返されていますが、冷静に考えてみれば、日本の面積は増える訳じゃない。逆に、1年間に世田谷区と同じ80万人ずつ減少、面積当たりの道路密度は既に、アメリカの3倍、イギリスやフランスの2倍に日本は達している、と日本道路協会も認めている。
 戦後62年を経て、すべての分野において日本は、漫然と造り続けるのでなく、直し始めねばならぬ局面に差し掛かっているのです。50歳を過ぎて弱くなった骨や歯を大切にするのと同じです。なのに政府は、新たな市町村道の建設には5割以上の補助金を手渡す一方で、維持・補修は自治体が自前でどうぞ、と予算措置を講じていない。財政難を理由に、道路だけでなく橋梁や隧道(ずいどう)の点検や修繕も怠れば、アメリカの悲劇と同じ事態に陥りかねません。新党日本は従来から、こうした維持・補修へと公共事業費を振り向けるべき、と提唱してきました。こうした作業こそ、直ぐには構造転換出来ない地域の土木建設業者が担当可能。地域経済の活性化にも役立つのです。
 なのに、人口減少社会における公共事業の在り方を議論すべき与野党とも、労使交渉と同じ次元の25円の攻防戦に終始しています。ガソリンが120円台に下がると自動車の利用が増えて地球温暖化が進み、北海道洞爺湖サミットの開催国として恥ずかしい、などと息巻く北海道選出の官房長官にいたっては、寒冷地の人々の苦しみも判らぬあなたこそ恥ずかしいでしょ。福田内閣は環境内閣だ、と胸を張るのなら、「温暖化と高齢化に対応すべく、超低床式のLRT(次世代型路面電車)を市街地に積極的に導入しよう」と提案したはいかがか。
 首相のおひざ元の群馬県で8000億円も投じて建設予定の八ツ場ダム計画を中止するくらいの決断もほしいですね。日本は国土の7割が森林なのに、林野庁の予算は4000億円にも満たない。しかも、間伐をはじめとする森林整備に投じているのはわずか400億円。巨大なダム1個の建設費用の20分の1にすぎないのですよ。戦後に造林されたスギやヒノキの人工林は、その半分以上が間伐も行われぬまま、荒れ果てています。地球温暖化を防ぐ上でも、これこそは急務なのに、不要不急の公共事業体質な日本の政治を、既存政党は誰も変えられないでいます。新党日本は今年も奮闘します。


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高速料金即時無料化を 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」12月31日号】

 自民、公明両党は、2008年度税制改正で、道路特定財源に関し揮発油税などの本来より高い暫定率を10年間維持し、道路整備などの財源を確保すると決めました。新党日本は、仮に暫定税率を存続させるなら、その8割に当たる年間2兆円を用いて高速道路各社の通行料金を即時無料化すべきと考えます。
 1?当たり25円もの暫定税率を維持する理由は「真に必要な道路整備を計画的に進める」からだと政府、与党は述べていますが、「真に必要な」という文言は余りにも抽象的、情念的。一体、誰がどういう基準で判断するかがまるで不透明。際限なく道路を造り続ける方便にすぎません。
 他方で、国土面積は変わらないのに日本は今後、世田谷区と同じ規模の80万人もの人口減少が毎年続き、わずか40年後には現在の3分の2となるのです。道路問題に限らず、量の拡大から質の充実へと、発想と選択、そして仕組みを変えねば日本は破滅してしまいます。
 新党日本が経済評論家の山崎養世氏とともに提唱する、高速道路の通行料金無料化の方策を以下にお示しします。
 まずは旧道路4公団が抱える約43兆円の債務を国が引き取ります。すると、民営化後の各社が通行料金を取り続ける根拠が消滅します。年間2.5兆円を超える暫定税率分の8割に当たる年間2兆円の財源を充当すれば、金利分も含めて30年間で完済できます。
 逆に各社は45年後に無料化すると“約束”していますが、東京オリンピックに合わせて開通した首都高速も30年で無料化するはずが、プール料金制を導入していまだに有料。既得権益をむさぼる官僚が、天下り先を確保するために悪知恵を働かせた結果です。ちなみに、米国とドイツの高速道路は無料。民営化後も有料のイタリアとて、ローマ-ミラノ580?間の通行料金は3500円弱。同距離の東京-神戸が1万3000円近い日本は、3倍もの高さです。
 通行料金が高いから、物流関係の車両は一般道を走行せざるを得ず、通学の児童が事故に遭遇する悲劇が後を絶ちません。無料化すれば、福島-新潟を結ぶ磐越道といった閑散道路にもトラックが通行し、時間短縮と事故軽減が実現します。
 片道3000円の東京湾アクアラインも無料化すれば、羽田空港から20分の千葉県木更津市に経済効果が生まれます。ソウル、上海に加えて近く北京からも旅客便が飛来し、昭和50年代のジャルパックよろしく観光客が“ビジットジャパン”する昨今、都内や川崎、横浜よりも地価が安い木更津に摘価な宿泊料金のホテルが建設されれば、地域雇用の増大と地元自治体への固定資産税も見込まれます。
 とまれ、現在でも暫定税率2.5兆円とほぼ同額の計2.6兆円もの通行料金を高速各社にわれわれは支払っているのです。つまりは高速道路無料化は消費者の負担を半分に軽減し、全国津々浦々に張りめぐらされた高速道路の有効活用と、地域間格差の解消に寄与する“打ち出の小づち”なのです。
 「おかしいことは、おかしいと言う」。新党日本は2008年も引き続き、脱しがらみ・脱なれ合いの社会を実現すべく奮闘を続けます。


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ねじれこそ民主主義のバネ 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」12月3日号】

 マスメディアは国会の状況を「ねじれ」「ねじれ」と言い立てますが、ブッシュ米大統領が共和党出身の米国も、議会は民主党が多数派。ねじれているのです。今回の「大連立」構想は大政翼賛会の再来だ、と懸念を示す向きもありますが、ドイツ初の女性首相によるメルケル政権も、保守のキリスト教民主・社会同盟と左派の社会民主党による大連立政権です。
 「ねじれ」「大連立」の惹句(じゃっく)には否定的な響きが強いのですが、冷静に見れば、衆参両院共に自公で過半数を占めていた今までの国会の方がアリバイ作りの審議時間が経過するや、数に任せて強行採決が横行する「翼賛」でした。新党日本は地球が壊れても自民党と一緒になることはないと述べてきましたが、“予定調和”の、事前に結果が見えている各会合に慣れ親しんできた「談合列島ニッポン」の島国意識を改める好機ととらえるべきです。
 自民党は引き続き政権を維持したい一心で“クリンチ”大連立を目指したのに対し、民主党の小沢一郎代表は具体的な政策を実現するために大連立を考えたのでしょう。55年体制下の不透明な料亭政治とは異なり、白昼堂々と政策協議を行う。「ねじれ」はむしろ、新しい民主主義のステージへと移行するためのバネだと考えたいですね。
 大連立を組むと小選挙区制度の下では候補者調整ができないから選挙が成り立たない、という理屈も矛盾しています。中選挙区制度の時代には自民党が派閥ごとに3人も4人も同じ選挙区に候補者を出して戦っていたではありませんか。現にドイツではかつて、社会民主党のブラント党首がキリスト教民主党のキージンガー政権で副首相を務め、その後の選挙で勝利して首相に就任しました。
 同様に、大連立を組んでも結局、自民党に振り回されるという論にも疑問符です。自社さ連立や自自連立の時代には、自民党は過半数を辛うじて維持すれば良いとの思いで、野党第1党の新進党や民主党でなく、少数派の社会党や新党さきがけ、自由党を数併せの論理で選びました。故に、政権内での自民党の優位は変わらず、連立を組んだ政党が自民党の主張に従わざるを得なかったのです。
 ところが「7・29」以降の参院は、仮に自民党が国民新党、社民党の両党と連立を組んでも過半数に至りません。連立すべき相手はもはや、参院第1党の民主党しかおらず、政治状況は一変しているのです。
 小沢さんは、トロイの木馬を装って政権の中に入り、若手議員に政権担当の実践的訓練を積ませ、その間に既得権益に生きる自民党を蚕食(さんしょく)しようと企てたのでしょう。連立を組まなければ、福祉や教育を充実させる野党案を可決しても結局は、自民、公明両党の“お手柄”で終わります。連立を組めば対等。よしんば自民党の反対で政策が実現できなければ、民主党は連立を解消し、どちらの判断が真の国民益ですかと有権者に問えば良いだけの話です。
 次期衆院選で民主党が“完全勝者”となる可能性は低いと同時に、自公で3分の2を占める可能性も皆無に近いのです。大連立構想はくすぶり続けるでしょうし、引き続き政局のカードを握っているのは、一連の辞意・慰留・続投で党内基盤をさらに固めた小沢氏なのです。

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ホントの政権担当能力 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」11月5日号】

 民主党が「農業者戸別所得補償法案」を参院へ提出しました。農家に対する戸別補償は、最近になって遅れて“個人主義”に目覚め始めた人たちには歓迎される政策でしょう。
 遠藤武彦前農相が組合長理事を務めていた農業共済組合が、国からの補助金を不正受給した問題で、現場の農業者も怒りを爆発させたのは、従来、仮にひょうが降って被害に遭っても共済組合段階でお金が止まり、農家には直接お金が届かない状況だったからです。
 戸別所得補償制度は、コメや麦などの標準的な販売価格と生産費との差額を単価として、生産面積に応じて交付金を支払う仕組みのようですから、兼業農家の人も専業農家の人も、零細な人、そうでない人にも、直接みんなに支給されます。集団主義から個人主義に目覚め始めた人にとってはありがたい政策だろうし、都会にいる人々にとっても食料自給率が低い日本だから仕方ないかな、と大目に見てもらえる内容ではあります。
 でも、中学卒業まで子ども1人当たり月額2万6000円を支給するという民主党の「子ども手当法案」には賛成しかねます。子どもを養育している世帯に所得制限を設けず、支給全額が国庫で負担する子ども手当は年間5兆円以上ものばらまきにしか映りません。
 消費税率を1%上げて選挙に負けるぐらいなら一気に二けた台に上げようと政権、与党の幹部が言い放ち、福田康夫首相が注意もせずにいる状況下で、敵に塩を送るようなものだと思えてなりません。増税するならご希望に添えますよ、と与党から“クリンチ”攻撃されちゃう。月額2万6000円というお金も、子どもを車の中で寝かせたままパチンコに興じて殺してしまうような親にとっては、パチンコ代の原資に化けかねません。
 だったら、小・中学校の教科書の無償配布をこれからもきちんと維持していくとか、学校給食にお金を出してもっと安心できる地域食材を使うとか、安倍内閣時代に打ち出した教育格差を拡大する「教育バウチャー」ではなく、働いている女性を対象にどこの保育所でも使える「保育クーポン」を配布するとか、こうした歓迎される「戸別」ならぬ「個別」の施策に金を出すべきですよ。
 ところが、官僚出身や組合出身の人たち、あるいは今までの政治に慣れ親しんだ人たちはそれでは金額が計算し切れないなどと、たわけた事を言う。月額が決まっていれば、子どもの人数も分かるから予算を確定できるが、そうじゃないと算出できない、と。
 民主党は、先の参院選で掲げたマニフェストだからやらなくてはいけないと言っていますが、「手続き民主主義」「スケジュール民主主義」に陥ってはいませんか?よりよい政策・発想が出てくれば、小沢一郎代表も「君子豹変(ひょうへん)す」べしで、それがリーダーシップです。
 1人頭いくらという発想を切り替えさえすれば、子どもの福祉向上に役立つ方策はいくらでも編み出せるのです。いったん造り始めたダム計画を止められないのと同じ官僚的発想を改め、5兆円よりも少ない金額でも、国民に歓迎されるよりよい政策を打ち出すことは可能なはず。それこそが真の政権担当能力というものです。

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福田がけっぷち内閣 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」10月8日号】

 「不退転の決意でテロ特措法の継続を」と叫びながら、その審議のための国会を1カ月半も開会せず、ようやく論戦スタートかと思いきや、テロと戦うはずの宰相が自ら突如の“自爆テロ”を敢行したのですから、いやはやです。しかも、ひ弱な宰相を支え切れなかった反省もどこへやら、辞任に伴う自民党総裁選で2週間もの“お祭り”騒ぎ。野党が国会で審議拒否すると「税金の無駄遣い」「政権担当能力なし」と批判して、「われこそが責任政党だ」と胸を張っていた自民党も、今回の一件では“無責任政党”ぶりを発揮してしまいました。日本とは「とてつもなく奇っ怪で見苦しい国」だ、と諸外国の目には映った事でしょう。
 それだけではありません。自ら招いた政治の空白が原因で、過去60年間、米国との約束はすべて守りますと言い続けてきた日本は今回、インド洋での海上自衛隊による米艦船などへの給油活動を11月以降も継続する「約束」を自ら放棄する羽目に陥りました。繰り返しますが、その原因は迷走を続けた与党の側にあるのです。
 さらには今回、権力の空白をも放置し続けました。一国の首相が、いつ退院するのか分からない状況なのに、政府は首相臨時代理を置かないまま。記者会見でただすと政府は、パトカーで先導すれば病院から官邸まで5分で移動可能だと言ってのけました。う〜む、テポドンが発射されても対応可能だと強弁するのでしょうか。責任政党を自任する面々の発想は、理解を超えています。
 後継の首相指名選挙に出席後、安倍氏は再び病院へと逆戻り。憲法の規定によれば、福田氏が国会で首相に指名されても、皇居での任命式を終えるまでは、首相は安倍氏のまま。権力の空白ならぬ権力の重複まで生まれてしまったのです。その間に、テポドンが飛来し、大地震が発生したら、一体、誰がシビリアン・コントロールの最高責任者となったのでしょう?
 さて、臨時国会での最大の焦点、海上自衛隊の給油活動。安倍内閣当時の与謝野馨官房長官は、「日本の給油活動が国連の安全保障理事会メンバーから高い評価を受けた」と胸を張りましたが、これこそまったくの牽強付会。安保理で採択された決議案には「JAPAN」の文字も「海上給油」も明記されていないのです。
 外務省の谷内正太郎事務次官は「自動車でいえば、ハイオクに限定される燃料をパキスタン艦船に提供し得るのは自衛隊の補給艦のみ」と公言しましたが、ぼくが防衛省に問いただしたところ、提供している燃料はナンと、日本や全世界のガソリンスタンドで日常的に売られている軽油2号。特別だと強調している燃料のろ過装置も、他国の補給艦に標準装備されています。
 海上自衛隊の給油活動をめぐる法案処理は至難の業。野党との論戦に勝てるかもと、防衛相に石破茂氏を起用しましたが、防衛相から外相に横滑りした派閥領袖の高村正彦氏に傷を付けないための人事では、と勘繰りたくもなります。
 所信表明演説も、霞が関の官僚が作成したとしか思えぬ抽象的で総花的な言葉の羅列。「背水の陣内閣」ならぬ「がけっぷち内閣」と命名した方がふさわしいのかな。

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オンリーワンの国際支援 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」9月10日号】

 秋の臨時国会では、米軍が中心となってアフガニスタンで実施しているテロリスト掃討作戦を支援するためのテロ対策特別措置法の延長問題をめぐって、与野党間で大きな争点となります。
 新党日本は、テロ特措法延長に反対です。昨年来、安倍晋三首相は憲法解釈で集団的自衛権を行使可能とするべく動いてきましたが、考えてみれば既に小泉純一郎前首相は、出掛ける場所が安全な場所などと、へ理屈にもならない発言で煙に巻いて、集団的自衛権に道を開く特措法を成立させてしまったのです。いったんリセットすべきです。仮に日本がインド洋上での米艦船への給油を終了しても、米国は20隻以上の給油艦を保有しているのです。無償で日本が給油してくれるならラッキー、という程度の「貢献」だったのです。給油を止めたら日米同盟にヒビが入るという人もいますが、それは短絡的すぎます。
 親米か反米かとか、日米同盟なのか国連主義なのかとか…。そうした不毛な○×式の二項対立ではなく、日米関係の安定こそ外交の基本という認識の上に立って、日本がある時には米国を諫め、日本も米国の助言に耳を傾ける、従米でも嫌米でもない、互いに助言や諫言を行う“諫米”という立場で日米関係を充実させるべきです。
 極東の島国で鉱物資源にも恵まれない日本ですが、地政学的にみて、太平洋を挟んで真向かいの米国は、安全保障の観点から日本を無視できないのです。アジアや環太平洋、ヨーロッパなどとの関係を構築する上でも、日米安保は双務的なのだ、という冷静な認識が必要です。
 日本のモノ作り産業が世界で評価されているのは「オンリーワン」「ファーストワン」を作り続けてきたからです。アフガニスタンでのテロとの闘いに75カ国も参加しているのだから、日本も“バスに乗り遅れるな論”ではなく、国際貢献も平和主義の日本ならではの支援を構築すべきでしょう。
 国連主義にも問題があります。国連は世界で最も官僚が牛耳る、無駄遣いが目立つ組織でもあるからです。一部で語られる国連決議に基づく国際治安支援部隊(ISAF)への参加も、慎重に議論する必要があります。アフガニスタンでは一般市民も巻き込む武力行使が主体となっていて、カンボジアでの国連平和維持活動(PKO)とはおよそ異なり、カナダもイギリスも数十人単位で死者が出ています。
 新党日本は、憲法9条1項、2項を堅持した上で、新たに3項を設け、医療支援や住宅再建を行う「国際救援隊」の創設を提案しています。軍隊を後方支援する「兵たん」ではなく、内戦で逃げ惑う人たちを救う「民たん」ともいうべき活動を行うのです。これこそは、国際赤十字をも超える、目に見える形での日本の貢献です。
 民主党の小沢さんとの会談の際、シーファー駐日米大使は、機密情報を野党にも公開すると言明しました。小泉前首相が胸を張っていた「強固な日米同盟」の実情が、今後は公開されていく可能性を示したのです。繰り返しますが、日米関係は日本外交の基本です。であればこそ、真の信頼関係を充実させる上でも野党は冷静に、今回の大使提案を活用していくべきです。

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「ヤッシー」ゲリラ活動開始 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」8月13日号】

 先の参院選で、組織も資金もないわれわれに177万人もの方々が投票して下さいました。従来の永田町の論理では、想像できない、解説できない話かと思います。が、今回の選挙では取り分け、新橋や有楽町を行き交うサラリーマンの方々が、昼休みや退社時に15分もの間、立ち止まって話を聞いて下さり、握手を求めながら「新しい日本宣言。」のマニフェストを持ち帰って下さるのが印象的でした。
 小泉純一郎前首相は自民党をぶっ壊すと息巻いたが、相変わらず古い体質のままじゃないか、民主党をはじめとする野党も、背後に控える大きな組織の代弁者じゃないかと感じている方々が、政党の中で唯一、あらゆる既得権益とは無縁の新党日本に期待して下さっているのだ、と痛感した選挙戦でした。
“国会の内視鏡”になる、と繰り返し申し上げてきました。「鈍感力」だけは長けているのか、混迷する社会に対する感知能力が欠落した政治家が目立ちます。あるいは逆に、内視鏡のレンズに腫瘍が映り込んでいるにもかかわらず、適切な手術を迅速に行わないどころか、その事実すら明かさない問題先送りの事なかれ主義も永田町では横行しています。
「国民対策」ならぬ「国会対策」という言葉の下で、水面下で手を握り合っていた旧態依然たる参院の実態を、そのまま映し出していきます。もともと私自体メディアム(medium)=媒体として発信し続けてきた存在です。「自ら主張し、行動し、変えていく」スタイル。永田町のしがらみ・なれ合いになじんできた方々からすると、価値紊乱なアンファン・テリブル=恐ろしい子供かもしれませんね。東京の世田谷区と同じ80万人ずつ毎年人口が減少していく、超少子高齢社会の日本は、量の拡大から質の充実へと、あらゆる分野で発想を変え、選択を変え、仕組みを変えていかねば、未来はないのです。
「常識をひっくり返すことにこそ、夢がある」。これは新党日本の結党宣言の一節です。参院定数242議席の中の1議席だから何もできない、ではなく、既得権益とは無縁の1議席だからこそ“勘性”が持ち味な田中康夫の発信力を駆使します。質問主意書や、早くも無駄遣いの伏魔殿と化しつつある独立行政法人の視察をはじめ、行動力と調査力に基づき、“参院ゲリラ”の活動を開始します。
 が、それにしても「人心一新」と言いながら、自分だけ居座って、茶坊主な部下を全員替える、いわば末期症状の3代目ワンマン経営者に引導を渡す政治家がひとりとして現れないとは驚き。「首相降ろし」に、今回は全員が“見送りバント”。参院の与野党逆転は逆立ちしたって3年間は変わらないし、総選挙に打って出ても、小泉バブルの数を衆院で維持できる訳もないから、誰も火中のクリを拾わない。
 いざ、こういう時だからこそ、オレが代わってやってやると言う人が出てこないのは実にふがいない。派閥機能が崩壊したからって理由も、単なる言い訳。みんな保身に走ってるんだ。それだったら政治家やるなよって言いたいね(苦笑)。とまれ、自分が一番かわいい安倍首相と同じ、自己中心的「ミーイズム」がまん延する奇っ怪永田町の“内視鏡”として、情報公開、説明責任を果たしていきます。

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安倍改憲論に対抗する 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」7月9日号】

 参議院選挙に向けて各政党とも年金通帳の導入を主張し始めましたが、2年前、毎月の積み立て実績と、将来の支給金額を明確に印字し、国民と国家が信頼の契約を結ぶ年金通帳を最初に提案したのが新党日本です。
 新党日本の年金通帳が他党よりも圧倒的に優れている点は、預けた金額を1カ月単位で印字するのに加えて、毎年度末には現在の給付率1・7倍で計算した国費支給分をプラスして、給付開始後に毎月確実にもらえる金額を印字する点です。
 わずか7年前に100年安心と称して現役世代の6割給付を約束したのに早くも5割です。他党の年金通帳や年金カードは年金見込み額なる言葉でお茶を濁しています。これでは、国中にまん延する疑心暗鬼な不安・不信は解消されません。
 年金通帳の導入を真っ先に提案したのは、伏魔殿と化している年金の資金運用の闇を白日の下にさらす触媒となるからです。政府は、150兆円存在するといわれる年金積立金が果たしていくら残っているか、明かしていません。人口が増加し続けるというねずみ講的前提で、メ財投ヤにまで「資金運用」してきた含み損が一体、どうなっているのか、その点をも明らかにしてこそ、真の年金制度改革へと踏み出せるのです。
 参院選公約の記者会見でも言及しましたが、憲法については、9条の1項と2項は堅持した上で、以下の3項を追加します。地震・津波などの天変地異、内戦や飢餓などに直面する地域での救助活動や医療支援、住宅再建へと駆け付ける、富国強兵とは対極の「国際救援隊」の創設です。
 訓練を受けた上で、普段は超高齢社会の国内で消防や救急の業務に従事して、海外でいったん緩急が生じたなら、真っ先に飛んでいく。兵たんの国際協力ではなく、民生的な「民站」を他国、他地域の人々のために行うのです。
 国家公務員法の改正も、天下りの“ざる”状態をさらに悪化させる改悪以外の何ものでもありません。誰もが指摘するように、各省庁単位であっせんしていた第2の人生を、政府がセンターを新設し、一元化して天下りを合法化するのですから。のみならず、独立行政法人への「転職」は退職直後に可能。そこから民間へと「再転職」するのは個人の自由で制限なしとした「改正」にこそ大問題が潜んでいます。
 国立大学や研究所が独法化して、理事をはじめとする数多くのポストが生まれました。文科省が天下り先を確保したと批判されていた莫大な数のポストは今後、各省庁のキャリア官僚の天下り先となります。工学部や農学部、薬学部、さらには土木や農業や薬学の研究所に、国土交通省や農林水産省、厚生労働省から理事として「転職」し、ほどなくして、ゼネコンや農業団体、製薬会社に「再転職」するのは、何らおとがめなし。
 無論、才能を有する人物は、その個人の資産形成のためではなく、社会の向上のために、彼らの知識や技術を活用すべきです。それは、政府がエージェントを設けて行うのではなく、学生の就職と同様に個人で門戸をたたいて「転職」先を探すべきなのです。とまれ、こんな悪法を百年の計だと思い込み、成立に向けて国会の会期をも延長したのが現在の日本の政治状況です。

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本当の100年安心 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」6月11日号】

 約5000万件に上る年金記録の不備、林道建設をめぐる官製談合事件、いずれも問題も不透明なお金の使い方が根底にあります。
 年金問題は、社会保険庁改革ではなく、年金制度改革でなければなりません。社会保険庁を日本年金機構に名称変更すれば解決する、そんな単純な話ではないのです。新党日本は2年前の総選挙時から「年金通帳」の導入を主張してきました。
 現在の「年金手帳」には加入した年月日が記されているのみ。いままで年金保険料をいくら払い込んだのか、年金はいつから、いくらもらえるのか、国民の多くは疑心暗鬼です。銀行の通帳は、いくら預金していくら使った、会社からボーナスが入ったとかが一目で分かるから、お金をためたり、働こうという意欲も起きるわけです。毎月の積立実績と将来の支給金額を明確に印字する「年金通帳」にすべきなのです。
 なのに、政府がそうしないのは恐らく、180兆円と言われている年金積立金の残高を、明らかにできないからではないですか? 古くは戦費にも、最近では道路公団にも“資金運用”した積立金が一体、いくら残っているのか、国民に公開するのが大前提です。
 人口減少に伴って年金の加入者の数が減る一方で、長生きになった分、年金をもらう人は増え、受け取る期間も長くなっています。政府は現役時代の収入の6割を払いますと言っていたのが、5割になり、受け取る年齢も60歳から65歳と先延ばしになっている。イギリスでは収入に連動して掛け金を月2000円から設定しています。毎月1万4000円近くも払い続ける意欲が若者に生まれるはずもない現在の制度を抜本的に改めるべく、年金通帳を導入して国民と国家が信頼の契約を結べなくては、日本に未来は訪れません。
 独立行政法人「緑資源機構」が発注した林道整備のコンサルタント業務をめぐる官製談合事件も不透明なお金の問題が背景にあります。
 林野庁の年間予算約4000億円のうち、公共事業費は約3000億円。つまり75%がコンクリートや鉄を山に埋め込んだり、山肌を削って林道を建設する公共事業。残りの25%も大半は職員の人件費。森林整備に用いているのは林野庁予算の10%にも満たないのです。なので、戦後に植林した針葉樹の間伐、下草刈りも、その実施率はわずか30%。それでいて、大規模林道は着々と建設している。本末転倒です。ここでもハコモノ行政の発想なのです。
 しかも、間伐そのものも森林組合が随意契約で請け負っています。長野県知事時代に、全国に先駆けて競争入札にしましたが、全国47都道府県の半分以上は今でも不透明な随意契約という現状です。間伐に土木建設業の方々も新規参入すれば、中山間地の雇用を新たに創出できます。
 ダムとか、道路は、みんなの目に見えるから批判を浴びてきたけど、実は土地改良や治山事業といった林野行政にも不透明な部分が存在しているんです。いままでは公共事業イコール国土交通省というイメージだったけど、実は農林水産省はメ見えない公共事業ヤをやっている。年金に農林行政。ともに抱える不透明なお金の使い方を改めなくてはいけません。

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本末転倒! 3連発 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」5月14日号】

 地球温暖化の防止策として二酸化炭素の排出削減に役立てようと、石油代替エネルギー・エタノールの需要が増えていく「らしい」のです。エタノール燃料の原料は、トウモロコシやサトウキビなどの穀物。
 こうした中、BRICsと呼ばれるブラジル・ロシア・インド・中国の急成長国でどんな激変が生まれているか?これまで丹精込めてオレンジやグレープフルーツを作っていたブラジルの農地は、手間も掛からぬ割に価格だけは上昇したサトウキビ畑へ一変。さらに作付け場所を確保するべく、森林を伐採する事態に。
 他方で人口が多い中国とロシアでは、経済発展に伴って富裕層が果汁飲料を朝食時に飲むようになり、ブラジルからの出荷量減少で、価格が急騰。その影響で日本でも10%近い値上げ率です。
 米国でも、シカゴの穀物取引市場でトウモロコシが急騰。その結果、家畜飼料が値上がりし、牛肉や牛乳などの価格も上昇しています。
 石油代替エネルギーの実用化自体は誰もが否定できない話とはいえ、農業が投機的になって伝統的な農の営みが崩壊の危機にひんしている。これって勘違いというか、本末転倒っていう感じがします。まして、日本は総合食料自給率が40%と先進諸国で最下位の深刻な状況なのにね。
 有害物質が発生しないよう高温焼却するガス化溶融炉も何か変。日本では、ごみ1トン当たりの建設費用が約5000万円。ところが、同じ日本の会社がカナダや韓国で請け負った金額は、日本の2分の1から3分の1。
 人件費や土地代が理由ではないんです。だって同じ装置を造る話ですから。ガス化溶融炉を製造・設置している日本の企業は限られていて、ある意味では「談合」と呼び得る状態になっているからなんですよ。でも、環境という美名の下に、高価格落札がまかり通っている。ゴミ焼却場をめぐる贈収賄が全国各地で後を絶たないのも無縁ではないでしょう。
 脱物質主義の21世紀は、環境の領域で新たなビジネスを創出すべきです。それに異論はありません。けれども、それが新たな利権の温床と化してしまっては、ダムやトンネルのハコモノ公共事業と変わりません。
 その意味では、弱者軽視の都市計画法も奇っ怪そのものですよ。33条では、災害危険区域、地滑り防止区域、土砂災害特別警戒区域等での開発を都道府県知事は許可してはならないとある。ところが29条では、社会福祉施設や医療施設などの開発は規制外と記しているんだから、現代の姨捨山を合法化しているような話。
 以前、広島でミニ開発した場所が大雨でがけ崩れが発生し、死者が出た。その教訓から小渕恵三内閣の時に地元の市町村長判断で規制可能とした。ところが多くの首長は、こうしたがけっぷちの土地を保有している農業や建設の組織支援を受けて当選しています。しがらみが邪魔して、規制に踏み込めないのです。
 地方分権の意味をはき違えてはいけません。地域住民の安全、安心のために、開発規制は国の責任で行うべきです。なのに、規制を緩和すべきところと、強化すべきところでアクセルとブレーキの踏み方を、残念ながら日本の政治は間違えているのです。

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安倍ちゃんマジックにご注意 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」4月16日号】

 政府、与党が検討している公務員制度改革、本当に「改革」たり得るんでしょうか。看板の文字だけ書き換えて、親方日の丸な「勝ち組」が焼け太りしてしまうだけではないですか。
 県知事時代に全国知事会で、国の行財政改革をチェックする特別委員会の委員長を務めました。その際に判明したデータは、まさに官僚の焼け太りを示しています。国家公務員の給与を指数100とすると、なんと独立行政法人の平均は107・4と給与が増しているのです。それだけでなく、独立行政法人化した後も、国から支出される予算は、ほとんど変わっていないのです。むしろ、公益法人などへの支出は増加傾向にあります。
 一例を挙げれば、2002年には4・16兆円だった特殊法人向け予算は、「構造改革」が進んだ04年には1・41兆円と一見、激減したように見えます。ところが、看板を書き換えた独立行政法人向け予算は2・69兆円と純増。2つ併せて4・10兆円ですから、差額はわずか0・06兆円=600億円。1時間に66億円もの速度で世界最悪の財政赤字を記録し続けるのがニッポンですから、600億円は、その半日分にも満たない「構造改革」の成果でしかないのです。
 無論、昼夜を問わず、国民のために奮励努力している多くの地道で誠実な官僚を、私は知っています。が、今回の新人材バンクは、そうした優秀な人材を日本の社会で活かす機構とは成り得ない。残念ながら、そう感じるのです。
 青雲の志を抱いて霞が関の門戸をたたく学生が減少し、外資系と称する金融機関を始め、入社時から高所得に恵まれる企業に就職する傾向が強まっています。希望の品物を買い求めるために、コツコツと働いて貯金する。そうした美徳は、いまや「欲しいモノはすぐに・お支払いは後で」のクレジット社会では絶滅寸前状態なのです。
 が、こうしたミーイズムの若者ばかりが“増殖”してしまうのは、ゆゆしき事態です。とするならば、真の公務員改革は以下の方針に基づくべきです。
 すなわち、8年連続でサラリーマン所得が減少する中、60歳まで安定した人生を送りたい深層心理の下に公務員を目指す者には、国民所得を少し上回る程度の収入を保証する。他方で、寝食を忘れて社会に奉仕する気概を抱いて官僚を目指す者は、それなりの給与とする代わりに5年ごとの再契約とする。ドラスチックな公務員改革を行わねば、優秀な人材が霞が関から逃げ出す一方です。
 なのに、今回の「新人材バンク」は、天下り先のあっせんを一元化する機関、と説明しているのだから、暗礁に乗り上げたホワイトカラー・エグゼンプションと同様に、有権者の反発を買うプレゼンテーションの仕方だよね。そもそも、非才な官僚ならば、国が再就職先をあっせんしなくとも、自主自律で探すべきでしょう。それとも、安倍晋三首相や渡辺喜美行政改革担当相には有権者が溜飲を下げるような、アッと驚くウルトラCの秘策があるのかな。
 でも、いまの人材バンクでは、前政権で総務相だった経済学者が特別顧問を務める人材派遣会社に試験的に委託するらしいですからね。「李下に冠を正さず」こそが混迷する政治への信頼回復なのに、う〜む、謎です。


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超えよ!数値マニフェスト 【週刊会員情報誌「Kyodo Weekly」3月19日号】

 選挙になるとみなさんマニフェスト、マニフェストって言ってるけど、どうして公約じゃいけないのでしょう。公約という言葉だと、いままでほごにしてウソをついてきた負い目を感じるから? あるいは利益誘導型で「ハコモノ」を地元に持ってくるというイメージが強いから? マニフェストと言い直すと、手あかがついていない分、何かすごいように思い込んでるんじゃないですか?
 で、統一地方選、参院選と“選挙の年”を迎えて、金科玉条のごとくに語られる「マニフェストって一体、何なの」と、思っています。
 マニフェストの多くは、どうしても数値目標の羅列になりがち。役人的な人、経済アナリストのような人なら得意分野でしょう。でも、役人がやってきたことや経済アナリストが言ってきたことが当たってたの? どうも日本は相変わらずお勉強主義、偏差値主義から抜け出てなくて、数字を並べると立派なものだと思っちゃう傾向がある。
 こんな施設をいくつ造ります、ここに防犯カメラを付けます、小学校を建て直しますよっていう話になって、形を変えたハコモノ行政になっちゃう恐れがあるんじゃないでしょうかね。いまの制度を前提とした数値目標を超えて、戦後61年で疲弊した制度を根底からどう変えていくのか、それを示してこそ超〜マニフェストです。
 長野県知事の時、農村集落や駅前商店街の空き家などを改修して、お年寄りのデイサービスと3歳までの子どもを預かる「宅幼老所」を300カ所創りました。子どもと一緒にお昼を食べて、昼寝することで互いに元気の素をもらうことができる。でも厚生労働省は、施設を新設する場合にしか補助しないんです。これからは造ることで財政を壊すのではなく、治すことで未来を創るべきです。
 国は教育基本法を改正しましたが、概念の話で、それで教育がよくなるとは思えません。長野では全国で唯一6年連続で借金を減らす一方、きめ細かい教育を提供するため、全学年で「30人規模学級」とし、教員の採用年齢制限を全面撤廃し、採用に社会人枠を設けました。
 新党日本は小さな所帯だけれど、こうした地方での経験に基づいて、ディテールからマクロを変革していく行動力があります。「信じられる日本へ」「おかしいことは、おかしいと言う」と宣言してます。よく国益と言われるけど、実は「国家公務員益」だったり、「国会議員後援会益」になってやしませんか?政治や行政はまず国民益、県民益を考えなくてはいけないと思っているのです。
 まず一人の消費者として働くべしというのが私の基本です。普通、商売はよい商品を開発して、よい営業をして、よい接客をして、納得していただいて、お代を後からちょうだいするでしょ。でもいまの政治や行政は、先にお代を受け取りながら、何に使うのかよく分からない。消費税は福祉目的にとか言って、現実は福祉に使われていなかったりする。5・7兆円もの道路特定財源も街路の電線地中化に用いているのは、3%にも満たない。
「現場主義・直接対話」を掲げる新党日本は、「怯まず・屈せず・逃げず」の精神で、「信じられる日本へ」変えます。

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